2021年1月4日(月)に配信された「岡山さんぽメールマガジン第156号」です。

新年のご挨拶

あけましておめでとうございます。皆様には健やかな新年をお迎えのこととお喜び申し上げます。

昨年は、一年を通して新型コロナウイルス感染症の拡大に苦しめられ、流行語大賞に選ばれた“3密”をはじめ“緊急事態宣言”“自粛”という言葉が頭から離れた日はありませんでした。何となく暗く押さえつけられるような時空の流れでした。
しかし、昨年末には2つの明るい話題がありました。一つは、「はやぶさ2カプセル」が地球に帰還したことです。実に6年間の時間をかけ50億キロの旅を終えての帰還です。特に、今回のミッションは何のトラブルもなく、ノーミスであったことは驚異といえるでしょう。“サンプルリターン”については世界でも日本がトップを走っています。

もう一つトップは、陸上長距離の新谷仁美選手です。昨年12月4日に行われた陸上日本選手権で、10,000ⅿで従来の日本記録を28秒45短縮して優勝しオリンピックの切符を手にしました。しかも、この記録は昨年の世界で2位に当たる記録ということですから、東京オリンピックではメダルも期待できます。楽しみです。新谷選手は、総社市の出身で興譲館高校のエースで高校駅伝では3年間1区の区間賞を取ったという実績を持っています。みんなで応援しましょう。

さて、昨年は、岡山産業保健総合支援センターも新型コロナウイルス感染症の拡大の影響をもろに受けました。主な事業である相談事業、研修会の開催なども実施不可能の状態が続きましたが、優秀な職員の努力の甲斐があって今年度中には何とか初期の目標を達成できるのではないかと考えています。

新型コロナウイルス感染症の拡大の影響は、全ての事業場に及んでいます。特に、中小事業場についての影響が大きいと考えられます。事業場のクラスターも発生しました。

30人以上の労働者に感染が及んでいますが、この感染拡大は食堂、更衣室が原因になることが多いと言います。マスクを外して大声で話すなどでエアゾルが飛散するからです。食堂、更衣室の換気等の環境整備、昼食等の時間差摂取などの対策が必要となります。

この場合、事業者の責任として安衛法第3条に「快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない」(産業保健21:コロナ時代のBCPと産業保健 浜口伝博)とあるように、新型コロナウイルス感染症対策についても事業者の責務は重大です。事業者としての自覚と覚悟が必要なのです。コロナウイルスとの闘いは、医療機関だけで解決できません。事業場と労働者もともにコロナとの闘いに臨んで欲しいものです。

しかし、一抹の光明も見えてきました。ワクチンの接種です。イギリスでは、昨年末にワクチン接種が始まったようですが、我が国においても今年の早い時期に開始されるものと思います。ワクチン接種が完了すれば、ある程度の安心は担保されると思います。

今年も、岡山産業保健総合支援センターへのご支援、ご協力よろしくお願いします。

岡山産業保健総合支援センター 所長 松山正春

相談員便り

産業医の専門性

産業医として様々な企業の方とお話しすると「先生の専門は何ですか?」という質問を時々受けることがあります。そんな時いつも答えに悩みます。結論を一言で言えば「私の専門は産業医です」という事になります。こちらはまじめにお答えしたつもりなのですが、聞いた人は「ですから専門は…?」と戸惑われてしまいます。

多くの人は「元々、内科の医師、精神科の医師、整形外科の医師などが、機会があって産業医をやっている」と思っているようです。確かにほとんどの場合は、その認識で間違いありません。しかし、産業医にもその専門性があり、最初からその分野を主体としてやっている人もいます。

私の場合は、大学を卒業して医師免許を取った後、産業医学を専門とする研究室に所属しました。最近では公衆衛生学などと並んで社会医学と分類されますが、病気になった人を治療するのが臨床医学であるのに対して、健康な人を病気にならないようにする、そしてさらに健康になってもらうのが社会医学です。社会医学の出身者は、最近コロナウイルス対策で話題になっている行政(厚生労働省・保健所など)や国際機関(WHOなど)で活躍する方もいます。そして、職域で活躍するのが産業医です。

コロナウイルスの感染拡大が止まらないという報道が連日続いています。それこそ最初のころは未知の危険因子だったと思うのですが、最近では少しずつ対策がわかってきました。まさに今こそ、産業医が専門性を発揮する機会だと思っています。大変な時期ですが、一刻も早く平穏な日常に戻るよう、私も自分のフィールドで日々努力していきたいと思います。

では、産業医の専門性とは何か?予防という観点では、まず、仕事が原因で病気となることの無いようにする。次に、一般的な病気を予防する。ここまでは、他の専門であっても、情報収集し勉強すればできるし、一般的な病気に関してはむしろ、病院の専門医の方が詳しいと思います。産業医の専門性とは「未知の危険因子を排除する」という点かと思います。原因不明の症状の多発…それが、職業性のもので無いよう、会社の業務の中身をしっかり把握し、必要であれば調査する能力。そして、症状が出る前に予防措置を講じる(これは理想であるが、かなり困難)。そのために、例えば職場巡視というものがあります。決して、衛生管理のあら捜しをしたい訳ではありませんので、巡視の際は是非いろいろと教えてください。

ご安全に!そしてご健康に!

岡山産業保健総合支援センター 相談員 伊藤森

《伊藤相談員が講師を務める研修会》

2021年2/10(水)15:00~16:30『働き方改革による労働安全衛生法の一部改正と産業医の職務について』(対象:産業医、更新1.5単位)

研修会のご案内

新型コロナウイルス感染症の感染リスクに十分配慮して「三つの密(密閉・密集・密接)」を避ける対策を講じた上で、研修会を開催しています。

《ピュアリティまきびで開催する研修会》

・1/14(木)14:00~15:30 『ストレスチェック制度とメンタルヘルス対策』
・1/21(木)14:00~16:00 『職域における働き方改革法とワークライフバランス及び業務改善の実際について』
・1/27(水)14:30~16:00 『メンタルヘルス不調による休職からの復職支援について』
・2/26(金)13:15~14:45『健康寿命の延伸も目指した健康管理』
・3/3(水)14:00~15:30 『発達障害労働者の行動特性に準じた対応について』

《YouTubeで視聴する研修会:(視聴可能時間)13:30~16:30》

・1/26(火) 『ストレスチェック制度とメンタルヘルス対策』(講義90分)
・3/5(金)『睡眠について』(講義90分)
・3/12(金)『発達障害労働者の行動特性に準じた対応について』 (講義90分)

《Cisco Webexでオンラインライブ研修会》

・1/18(月)14:00~15:30『交替勤務者の労務管理ついて』
・2/15(月)14:00~15:30『新型コロナウイルス感染症流行下におけるBCP管理について』

《Zoomで参加する研修会》

・2/1(月)13:30~15:00『パワハラグレーの対応理論と実務』
・3/1(月)13:30~15:00『家族の関与の重要性と実務』

◆研修会の参加申し込みはこちら

産業医研修会(2/10)のご案内

働き方改革による労働安全衛生法の一部改正と産業医の職務について

内容: 2019年に改正された労働安全衛生法の「産業医・産業保健機能の強化」について解説します。また、長時間労働者・高ストレス者の「面接指導」について、メンタルヘルスに係る相談対応への関わり方について解説します。

講師: 伊藤森
日時: 2021年2/10(水)15:00~16:30
単位: 生涯研修(更新1.5単位)
会場: ピュアリティまきび(岡山市北区下石井2-6-41)

◆研修会の参加申し込みはこちら

次回の第157号は2月初旬に配信予定です。