岡山労働局労働基準部健康安全課長

労働基準行政の運営、特に労働者の安全と健康確保対策の推進につきましては、日頃から格別の御協力を賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、送気マスクの使用については、平成25年10月29日付け基安化発1029第2号「送気マスクの適正な使用等について」により使用の際の留意事項等を示しておりましたが、今般、「日本産業規格(JIS)T 8153:送気マスク」の改訂等を踏まえ、令和6年11月7日付け基安化発1107第1号により厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課長から別添の通知がありましたので、関係者への周知をお願いいたします。

送気マスクの適正な使用等について

基安化発1029第1号
平成25年10月29日
改正 基安化発1107第1号
令和6年11月7日

厚生労働省労働基準局
安全衛生部化学物質対策課長

送気マスクは、空気中の有害物質の吸入による健康障害を予防する等のため、ろ過式呼吸用保護具(防じんマスク、防毒マスク等)が使用できない環境下においても使用することができるものとして、有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号)、特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号)、酸素欠乏症等防止規則(昭和47年労働省令第42号)等においてその使用が規定されている。

しかしながら、清浄な空気が供給される送気マスクにおいても、顔面と面体との間に隙間が生じたこと、空気供給量が少なかったことなどが原因と思われる災害が発生したところである。

このため、送気マスクの使用等に関する注意事項を下記のとおり示すので、送気マスクを使用する事業者への指導等に当たって、万全を期されるようお願いする。

なお、関係団体に対しては別紙のとおり要請を行ったので了知されたい。

1 送気マスクの防護性能(防護係数)に応じた適切な選択

送気マスクの選定に当たっては、日本産業規格(JIS T 8150:2021「呼吸用保護具の選択,使用及び保守管理方法」及びJIS T 8153:2023「送気マスク」)を参考に、作業者の顔面・頭部に合った寸法の呼吸用インタフェースを有する送気マスクを選択すること。

なお、別添のとおり使用する送気マスクの指定防護係数が次の式により求められる要求防護係数と比べ、十分大きなものであることを確認すること。

PFr = C/Co
PFr:要求防護係数
C:呼吸用保護具の外部の労働者の呼吸域における有害物質の濃度
Co:労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第577条の2第2項の規定による濃度基準値。濃度基準値が設定されていない場合には、米国産業衛生専門家会議(ACGIH)や日本産業衛生学会などの諸機関が公表する職業ばく露限界値

酸素欠乏(空気中の酸素濃度が18%未満の状態)環境では、JIS T 8150において、指定防護係数1,000以上の全面形面体を有する給気式呼吸用保護具(送気マスク又は自給式呼吸器)を選択することとされていることに留意すること。

2 呼吸用インタフェースに供給する空気量の確保

送気マスクは、呼吸用インタフェースに十分な量の空気が供給されることで所定の防護性能が発揮されるため、その空気供給量に適した空気源、ホースなどを備えること。

なお、空気供給量を最小に絞った場合は、平均呼吸量としては十分でも、ピーク吸気時には不足する空気が面体内に漏れこむ可能性があるので、作業に応じて呼吸しやすい空気供給量に調節することに加え、十分な防護性能を得るために空気供給量を多めに調節すること。具体的には、取扱説明書を確認するほか、製造者に問い合わせる等により適切な空気供給量を確保すること。

また、送気マスクを使用する際は、有害な空気を吸入しないために、ろ過フィルターの定期的な交換のほか、清浄空気供給装置等を使用することが望ましい。給気式呼吸用保護具のための呼吸可能空気については、JIS T 8150に規定があるので参考にすること。

3 ホースの閉塞などへの対処

送気マスクに使われるホース(純正品でないものを含む。)については、手で簡単に折り曲げることができるものがあり、タイヤで踏まれたり、障害物に引っ掛かるなどのほか、同心円状に束ねられたホースを伸ばしていく過程でラセン状になったホースがねじれ、一時的に給気が止まることがある。このため、十分な強度を持つホースを選択すること、ホースの監視者(流量の確認、ホースの折れ曲がり等を監視することとともに、ホースがねじれないよう引き回しの介助等を行う者)を配置すること、ホースがその他の作業者の動線と重ならないようにすること、タイヤで踏まれないようにすること等の対策を講じること。

また、監視者を配置するに当たり、1人の監視者が複数の作業者を監視する場合には、適切に各作業者の状況が把握できるような体制とすること。

なお、給気が停止した際に、そのことを作業者に知らせる警報装置の設置、面体を持つ送気マスクでは、面体内圧が低下したことを作業者に知らせる個人用警報装置付きのものは、作業者の速やかな退避に有効であること。

さらに、IDLH環境(Immediately Dangerous to Life or Health:生命及び健康に直ちに危険を及ぼす環境)など非常に危険な環境では、給気が停止した際に対応するために小型空気ボンベを備えた複合式エアラインマスク、空気源に異常が生じた際にそのことを警報するとともに空気源が自動的に切り替わる緊急時給気切換警報装置に接続したエアラインマスクの使用が望ましいこと。

4 作業時間の管理及び巡視

送気マスクを使用している場合においても一定の有害物質の吸入ばく露があり得ることから、長時間の連続作業を行わないよう連続作業時間に上限を定め、適宜休憩時間を設けること。

また、法令に定める作業主任者に、その職務、特に作業計画及び作業場の巡視を行わせること。

さらに、夏季における船体の塗装区画内部等では、高温になることで有害物質の蒸発量が増し、その結果ばく露濃度が増大することがあり、熱中症とも相まって中毒を起こしやすいことに留意すること。

5 緊急時の連絡方法の確保

送気マスクを使用して塗装作業等の長時間の連続作業を単独で行う場合には、異常が発生した時に救助を求めるブザーや連絡用のトランシーバ等を備えるなど、緊急時の連絡方法の確保を行うこと。

6 送気マスクの使用方法に関する教育の実施

雇入れ時又は配置転換時に、送気マスクの正しい装着方法及び顔面への密着性の確認方法について、作業者に教育を行うこと。

別添 JIS T 8150附属書JB「呼吸用保護具の指定防護係数」(抜粋)

呼吸用保護具の種類呼吸用インタフェースの種類
半面形面体全面形面体フードフェイスシールド
 給気式呼吸用保護具送気マスク複合式エアラインマスクプレッシャデマンド形501000
デマンド形1050
エアラインマスクプレッシャデマンド形501000
デマンド形1050
一定流量形50100025/1 000 a)25
ホースマスク電動送風機形5010002525
手動送風機形1050
肺力吸引形1050

給気・ろ過両用式呼吸用保護具は,使用する作動モードによって,指定防護係数を適用する。
注記 指定防護係数は,呼吸用保護具が正常に機能している場合かつ呼吸用保護具の使用方法について,よくトレーニングされた着用者が使用した場合に期待される最低の防護係数である。
注a) 呼吸用保護具の製造業者による作業場所防護係数(WPF)又は模擬作業場所防護係数(SWPF)の測定結果が,表中の指定防護係数値以上であることを示す技術資料(附属書JC参照)が提供されている製品だけに適用する。

別添 「送気マスクの適正な使用等について」(平成25年10月29日付け基安化発1029第1号)新旧対照表

PDFファイル