化学物質の性状に関連の強い労働災害の分析結果を公表します。なお、本結果によると、食料品製造業、小売業・飲食店、清掃業など今まで化学物質管理と関連が薄かった業種で多くの災害が発生していました。

分析結果(厚生労働省)

化学物質の性状に関連の強い労働災害(事故の型が有害物等との接触、爆発、火災によるもの)は、直近 10 年間で、年間 500 件前後で推移しており、減少は見られません。※これに加え、職業がんの労災補償の新規支給決定者は、石綿による中皮腫・肺がんを中心に年間約 1,000 人に達します。

「有害物等との接触」による労働災害(令和元年から3年)について

業種別にみると、

食料品製造業(162件)、小売業・飲食店(計 134 件)が、化学工業(119 件)や金属製品製造業(88 件)よりも多くなっています。

また、清掃・と畜業(97件)建築工事業・その他の建設業(計141件)といった第三次産業や建設業など幅広い業種で発生しています。

どのような製品で?

厨房やビルメンテナンスを中心に様々な業種で使用されている洗剤・洗浄剤による労働災害が約3割(371件)を占めています。

また、消毒・除菌・殺菌・漂白によるものも108件と、多くなっています。

作業別にみると、

製造作業中が 1 割程度であるのに対し、清掃・洗浄作業中が約3割(382件)、移し替え・小分け・交換・補充作業中(124件)、点検・修理・メンテナンス作業中(99件)がそれぞれ1割程度となっており、非定常作業における労働災害が多いことがわかります。

業種別 災害事例

食料品製造業:
フライヤーの油洗浄をするため、薬品をスポンジに浸してこすって汚れを落とす作業をしていたところ、手袋着用のみで腕カバーをつけていなかったため、薬品が袖口から腕に伝わり火傷した。

化学工業:
工場内において、前製造で使用した配管の自動洗浄中であるにも関わらず、次の製造に使用するための配管を形成しようとして、誤って自動洗浄中の配管を外してしまったため、アルカリ洗浄液が飛散し、当人に降りかかった。

清掃・と畜業:
一般住宅において流し台の排水管の詰まり除去作業中、洗浄剤を排水口に使用した際、汚れと洗浄剤が化学反応を起こして液体が跳ねて目に入り負傷した。

金属製品製造業:
アルミのエッチング薬品液を更新作業において、水が入ったエッチング槽に粉末状の苛性ソーダを投入したところ、水を約 60℃に加熱していたため突沸が起こり、飛散した薬品液が顔面、首、脇腹にかかり化学熱傷を負った。

建築工事業:
床補修工事において、換気が不十分な状態でエンジン研磨機を使用したため、一酸化炭素中毒となった。

上位以外にも災害事例が紹介されています。詳細は、「化学物質の性状に関連の強い労働災害の分析結果」(厚生労働省)をご確認ください。