はじめに:

事業者は、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「安衛法」といいます。)、じん肺法(昭和35年法律第30号)に基づき実施する健康診断の結果や、労働者の健康確保措置のための活動を通じて、様々な労働者の心身の状態に関する情報(「心身の状態に関する情報」のうち、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号。以下「個情法」といいます。)第2条第3項に規定する「要配慮個人情報」に該当するものを本手引きでは「健康情報」と定義した上で、以下「健康情報等」といいます。)を保有しています。これらの情報は、事業者において、労働者の健康確保措置のために有効に活用することが求められる一方で、労働者本人の意図に反して不適正な取扱いが行われた場合、労働者の昇進又は異動(以下「人事」といいます。)等において労働者が不利益な取扱いを受けるおそれもあるため、慎重な取扱いが必要となります。

本手引きは、労働安全衛生法第104条第3項及びじん肺法第35条の3第3項に基づき公表した「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成30年9月7日 労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱い指針公示第1号、以下「指針」といいます。)に基づき、事業者が策定すべき取扱規程について解説するものです。事業者は、健康情報等の適正な取扱いのために、労使の協議により、各種情報を取り扱う目的、方法、権限等について取扱規程に定め、労働者に周知する必要があります。

事業者は、事業場の規模に応じて、産業医や衛生管理者を選任する等、適切な労働衛生管理体制をとることが定められています。多くの事業場では、それらの労働者の健康管理に関する業務に従事する者(産業医や保健師等の医療職種や衛生管理者など。以下「産業保健業務従事者」といいます。)が中心となり、労働者の健康情報等を取り扱っていますが、事業場によっては、産業保健業務従事者がおらず、人事部門の担当者等が、健康情報等を取り扱う場合もあります。

いずれの事業場においても、労使による話合いに基づき、事業場の状況に応じた健康情報等の取扱いの在り方が取扱規程として策定され、労働者に広く周知されるなど、適正な取扱いが確保されることで、労働者が不安を抱くことなく、安心して自身の健康に関する情報を事業者に提供できる環境を整備することが必要です。事業者や関係者により健康情報等が適切かつ円滑に取り扱われることにより、労働者に対する健康確保の取組が一層推進されることが期待されます。

作成:厚生労働省(2019年3月)

事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き