労働者健康安全機構では、労働災害の発生状況や行政のニーズを踏まえ、労災補償政策上重要なテーマや新たな政策課題について、時宜に応じた研究に取り組んでおり、3領域10テーマの労災疾病等医学研究・開発に取り組んでいます。

「労災疾病等医学研究普及サイト」には、各研究テーマの研究計画の概要を掲載していますので、ぜひご覧ください。
http://www.research.johas.go.jp/index.html

今回はその中で「勤労世代肝疾患」についてのご紹介です。
https://www.research.johas.go.jp/kinrou2018/index.html

C型肝炎を主とするウイルス性慢性肝疾患は勤労者世代にも多く発生する疾患です。従来の治療では週1回の注射のための通院や、さまざまな副作用、治療や通院期間が長期に及ぶことが勤労者にとって負担となっていました。

2014年から導入された経口薬のみによる治療(DAA治療)により、C型慢性肝疾患患者の治療期間は最短で8週間まで短縮されましたが、従来の治療でも見られた治療後の肝がん発症リスクについては未だ明らかになっていないため、がんの検査で年数回の受診が必要となります。

本研究では、勤労者の健康支援及び治療と仕事の両立支援に繋げるためC型慢性肝疾患の患者さんの経過観察を行い、その後の肝発癌や関連因子を検討することで、勤労者世代におけるインターフェロンフリー治療の意義とその後の効率的な経過観察体制の確立を目指しています。

中間報告ですが、肝発癌の有無の評価を行いながら、インターフェロンフリー治療の開始前や終了時の病理学的検査結果と発癌との関連を検討し、特定の検査値が、その後の肝発癌予測因子となる可能性があることがわかりました。また、マウスを用いて肝腫瘍発生率を評価し、マウスモデルでは抗酸化作用を持つ特定の薬剤の投与による酸化ストレス抑制が肝発癌の抑制に有用である可能性が示唆されました。今後、研究結果を取りまとめ論文投稿を予定しております。