研究代表者 松山 正春 所長      岡山産業保健総合支援センター
研究分担者 岸本 卓巳 産業保健相談員 岡山産業保健総合支援センター
横溝 浩  産業保健相談員 岡山産業保健総合支援センター
高尾 総司 産業保健相談員 岡山産業保健総合支援センター
島村 明  労働衛生専門職 岡山産業保健総合支援センター

作成:岡山産業保健総合支援センター(令和5年3月)

1 はじめに

溶接の際に発するヒューム中のマンガン吸入によりパーキンソン症候群様の運動機能障害が発症することが知られているが、実際の溶接現場においてどの程度のマンガン吸入があるか詳細な調査はされていない。そのため、溶接作業者におけるマンガン個人ばく露濃度と全血中マンガンを測定するとともにマンガン中毒の予兆が無いか精神・神経学的な検討を行うことにした。

2 対象

溶接作業を週40時間行っている8事業場の43例である。大半はMAG溶接作業であったが、4名の被覆溶接作業者が含まれた。溶接材料におけるマンガンの含有は5 %以下であった。8事業場のうち1事業場は対象者が1名であったため、その他の7事業場別の検討を行った。

3 方法

性別、年齢、溶接作業期間を聴取するとともに個人サンプラーを用いて吸入マンガン濃度、防じんマスクの漏れ率を測定するとともに全血中マンガン濃度を測定した。

精神・神経学的調査項目としては、パーキンソン症候群診断手順を参考として、精神・神経症状の有無を調査した。

4 結果と考察

対象者は全例男性で、年齢中央値は41歳、溶接作業に従事した期間は中央値11.6か月であった。

個人ばく露測定による吸入性マンガン濃度は0.5623 ± 0.6374mg/㎥ と溶接作業内容によって大きく異なっていた。また、防じんマスクの漏れ率は21.90 ± 19.57 %であった。マスクの漏れ率から求めた吸入性マンガン濃度は0.144 ± 0.269mg/㎥であった。事業場別検討ではD事業場ではマスクの漏れ率を考慮した吸入マンガン濃度が0.423 ± 0.350mg/㎥と全ての作業者で管理濃度の0.05mg/㎥を超えるのみならず許容濃度の0.2 mg/㎥に比較しても高い作業者が多く、全体的にマンガン個人ばく露量が高いことが判った。一方、全血中マンガン濃度は1.47 ± 0.49µg/dLであった。

図1. 事業場別吸入マンガン濃度(mg/㎥)

事業場別に検討すると図1のようにD、A事業場では吸入性マンガン濃度が高いため、同様に全血中マンガン濃度も高値を示す傾向にあり関連性が示唆された。しかし、全例を対象とした全血中マンガン濃度に対する吸入性マンガン濃度やマスクの漏れ率、吸入性マンガン濃度等を用いた多変量解析においては、いずれにも有意差は認められなかった。また、マンガンによる精神・神経学的な診察では、43名には異常所見は認められなかった。

溶接作業者のマンガン個人ばく露濃度は比較的高いため、防じんマスクを適正に装着しなければ中毒症状が出現する可能性もあると考えられた。

報告書

令和4年度 調査研究報告書「溶接作業におけるマンガンばく露と防じんマスク効率に関する調査研究」[PDF 590 KB]

産業保健調査研究についての詳細は、労働者健康安全機構のサイトでご覧ください。