相談員便り

職場のコウモリと、大人のエコーロケーション(石原久司相談員)

相談員(耳鼻咽喉科)の石原です。早いもので、相談員として2年目のシーズンを迎えました。皆様の温かいご指導のおかげで、少しずつこの仕事の「空気」を読めるようになってきた気がいたします。

​さて、その「空気」つながりで、今日は音の話をさせてください。耳鼻咽喉科医にとって音は日常そのものですが、音とはつまり空気の振動です。人間の可聴域はだいたい20Hz〜20,000Hz。その上の領域は「超音波」と呼びます。

この超音波を巧みに操る代表格がコウモリです。彼らは暗闇の中で超音波を放ち、跳ね返ってくる音を聴くことで周囲の状況を把握する「エコーロケーション(反響定位)」を行っています。超音波の発生法はコウモリの種によって異なりますが、ルーセットオオコウモリの仲間は自らの舌を口蓋(口の天井)にパチンと打ち付けて、超音波を出しています。​そう、人間で言うところの「舌打ち」です。

皆様の職場には、わざと聞こえるように「チッ」と舌打ちをして、周囲に不機嫌をアピールする人はいませんか?​最近では「フキハラ(不機嫌ハラスメント)」などという言葉もありますね。彼らは「自分の立ち位置を測るために、必死に舌打ちでエコーロケーションをしているコウモリ」なのです。「あぁ、あの人は今、周囲の反応を探っている暗闇の迷子なんだな」と思えば、少しだけ優しい気持ちになれる(あるいは、少し気が楽になる)かもしれません。ぜひ今度、職場で実践してみましょう。

​最後に、もしこれを読まれている皆様の中に、ストレスからつい「エコーロケーション」をしてしまいそうな方がいらっしゃいましたら、ぜひコウモリを見習っていただきたいと思います。コウモリのように、人間には聞こえない「超音波」で、静かに舌打ちをしてみてください。職場の平和を守りつつ、自分の位置を確認する、大人のエコーロケーションの嗜みです。なお、ルーセットオオコウモリは池田動物園にもいます。職場のストレスはぜひ池田動物園でコウモリを眺めながら発散して下さい。

​2年目も、皆様の「聞こえないSOS」までしっかりとキャッチできるよう、感度を高くして相談業務に励んでまいります。本年度もどうぞよろしくお願い申し上げます。

■石原相談員について
https://okayamas.johas.go.jp/consultation/advisor-profile/#ishihara_hisashi

倉敷での産業衛生学会開催の意義(神田秀幸相談員)

2026年は世界を意識せざるを得ない年となっています。ミラノ・コルティナ冬季五輪、サッカーW杯、そして秋にはアジア競技大会が愛知・名古屋で開催されます。

一方、世界の政治情勢に目を向けると、依然として終息が見えないロシア・ウクライナ戦争、年明けのベネズエラ大統領拘束、グリーンランド危機、イスラエルと米国によるイラン攻撃など、紛争や危機、混乱が世界各地で勃発しています。対立より対話、紛争より平和、ルールのもとに誰もが秩序をもって行動すること、こうした当たり前のことが普通にできることを、世界に望まずにはいられません。

スポーツに誰もが心を動かされ、熱くなったり感動したりするのは、その根底にこうしたルールや平和の姿勢があるからなのではないかと個人的に思う次第です。わが国で開催されるアジア競技大会が平和のもと開催されることを切に願っています。

本年11月5‐7日岡山県倉敷市にて、第36回日本産業衛生学会全国協議会が開催されます。

倉敷市はおよそ100年前に第1回日本産業衛生学会が開催された記念すべき地です。再び倉敷に学会開催が戻ってくるのを大変光栄に思うところです。100年前の当時、倉敷紡績などの事業を手がけた実業家である大原孫三郎氏が工場労働者の健康や労働環境に対して改善の必要性を感じ、会社の一角に倉敷労働科学研究所を創設しました。

この倉敷労働科学研究所の初代所長として東京大学医学部から着任したのが、暉峻義等(てるおかぎとう)先生でした。暉峻先生は、労働環境や労働者の栄養に課題を感じ、次々と改善をなされた功績をお持ちです。こうした取り組みから、暉峻先生は第1回日本産業衛生学会の学会長をお勤めになりました。わが国の産業保健のパイオニアのひとりとして、語り継がれてきたレジェンドです。

今秋に倉敷市で開催される産業衛生学会は、先人たちの歩んできた道のりに敬意を表しつつ、これからの百年の歩みにつながる会になることを切に願っています。

企画運営委員長(大会長に相当)は川崎医科大学衛生学教室伊藤達男教授であり、地元倉敷の大学としてこの学会開催に意欲的です。大会テーマを“ここから始まった感謝の旅路 想いを胸に皆で集いあう”とされています。会場は、倉敷紡績跡地にある倉敷アイビースクエアを始め倉敷市民会館、倉敷市芸文館です。

わが国の産業保健の原点のひとつ、産業衛生の発祥の地が、ここ倉敷市にあることを誇りに思います。開催される学会では、産業保健の「温故知新」の示唆に富む企画が予定されています。

倉敷での全国協議会が、対話・平和・秩序をもって開催されるように願っています。2026年のこの学会が、暉峻先生の功績のように、再び産業保健の世界で広く意識されるきっかけになれば幸いです。

第36回日本産業衛生学会全国協議会
https://www.kwcs.jp/sanei-kyogikai2026/

■神田相談員について
https://okayamas.johas.go.jp/consultation/advisor-profile/#kanda_hideyuki

研修会のご案内

研修会についてはこちら
https://okayamas.johas.go.jp/training/

産業医研修会についてはこちら
https://okayamas.johas.go.jp/category/training/ipt/

〔JOHAS〕勤労者医療・研究に関するお知らせ

病職歴データベースを活用した研究~アルコール摂取パターンと緑内障の関連~

労働者健康安全機構(JOHAS)が運営する労災病院グループでは、全国の労災病院に入院された患者さんにご協力をいただき、それまでの仕事や生活習慣等に関する情報(病職歴)を収集しています。

収集した情報はデータベース化し、職業と疾病との関連性についての研究に活用しています。研究成果は、勤労者の健康保持・増進、疾病の予防・治療・職場復帰支援に活用しています。今回は、この「病職歴データベースを活用した研究」についてご紹介します。

今般、病職歴データベースを用いて、日本におけるアルコール摂取パターンと緑内障の関連性について検討を行いました。

その結果、飲酒の頻度や量などのアルコール消費パターンが、緑内障の有病率と正の相関関係にあることが明らかになりました。
アルコール摂取の頻度と量の両方が緑内障と関連していることが示唆された一方、性差については今後さらなる研究が必要です。

研究論文が以下のリンクからご覧になれます。

論文タイトル:『Association Between Alcohol Consumption Patterns and Glaucoma in Japan』(佐野圭先生)

リンクURL:
https://www.johas.go.jp/kenkyu_kaihatsu/tabid/1074/Default.aspx

「妊娠時の食・生活習慣」について

日本では働く女性が年々増加しており、出産前後に就業を継続する割合も年々増加しています。そのため、働きながらの妊娠や出産、産後のスムーズな社会復帰を支援するためには、妊娠前後のケア(妊産婦・子どもの健康)をより充実させることが重要です。

近年の日本の出産に関する統計データでは、出生時の体重が2,500g未満の割合が増加しており、ここ10年間はその割合が9.5%と高止まりしている状況です。

原因としては、高齢出産者の増加に加えて、多くの若年女性が瘦せていることが考えられ、妊婦が十分な栄養を摂取できていない可能性があります。

この研究では、周産期における生活習慣、特に食習慣について、食のタイミングを考える時間栄養学的に調査し、健康や体重管理、さらには出生時の体重との関連について解析を実施しました。

働きながらの妊娠・分娩、産後のスムーズな社会復帰のために、妊婦や胎児の健康への取組みの改善策について探求することを目的とし、令和5年度から「勤労女性の妊娠時の食・生活習慣に関する時間栄養学的研究」を実施しています。

詳細は以下URLからご覧ください。
https://www.johas.go.jp/kenkyu/rosaisippei13bunya/tabid/2537/Default.aspx

第36回日本産業衛生学会全国協議会のお知らせ

2026年11月5日(木)~7日(土)、岡山県倉敷市(倉敷市民会館、倉敷市芸文館、倉敷アイビースクエア)にて、第36回日本産業衛生学会全国協議会が開催されます。

産業保健の現場に直結した知見や新たな視点を得られる貴重な機会です。
産業保健活動を深める学びの場として、また新たな知見を獲得する場として、ぜひご参加、ご活用ください。

詳細は下記HPをご確認ください。
https://www.kwcs.jp/sanei-kyogikai2026/

また、最新情報の受け取りやリマインドにはLINE登録が便利です。
LINE公式アカウント https://lin.ee/8R3uH8X

11月5日(木)には、日本医師会認定産業医【実地研修】の単位取得プログラムを開催予定です。
現在、定員にまだ空きがございますので、取得をご希望の先生はお早めにご確認ください。

政令法の施行について(厚生労働省労働基準局)

労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整理等に関する政令法の施行について(個人事業者等の安全衛生対策の推進に係る規定関係)(R8.5.26)

https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001704274.pdf

次回の第223号は2026年7月15日に配信予定です。