2022年3月1日(火)に配信された「岡山さんぽメールマガジン第170号」です。

1.相談員便り

就労困難(中島誠相談員)

働くことが難しくなった時、その背景には様々な問題が潜んでいます。今回は、3人の事例についてお話します。いずれも20代の若者です。

Aさん、女性、ある専門の職場で働いていました。Aさんにとっては初めての職場で、そこでは複数人で和気藹々と話し合いをしながら業務をこなしていました。想像ですが、北京冬季五輪のカーリング女子、日本代表チームの皆さんが醸し出しているような雰囲気の職場です。Aさんは楽しくのびのびと積極的に仕事が出来ていたのですが、ある時、人事交流と称して上司からグループ会社への転籍を命じられ、赴任してみると、そこでは仕事内容は同じでしたが、Aさんひとりの責任で業務をしないといけない職場でした。同僚もいますが、それぞれ別の仕事を抱えていて相談相手になって貰えない雰囲気でした。Aさんは次第にふさぎ込むようになり、病気休暇を取得、その後休職となってしまいました。

Bさん、男性、この方も専門職です。仕事内容は得意でもなく不得意でもなく、好きでもなく嫌いでもないということで、何となく今の会社に就職しました。最初の数年は会社を休むことなくそれなりに仕事も出来ていましたが、やがて繁忙期などで仕事量が増えた時それをやり遂げた後に出勤できなくなるようになり、ここ数年は、1年間に2~3か月ほど休む(欠勤)という状況が続いています。かかりつけの医師からは、今の仕事が本当に自分に合っているのか考えてみるように言われていますが、調子のいい時はこのままでいいと思い、調子の悪い時には何も考える余裕がないという状態で、Bさん自身もどうしていいかわからない状況が続いています。

Cさん、男性、事務職です。就職して数年経過した頃より書類の確認作業が増えるようになり、徐々に日常生活も憂鬱となり、某精神科クリニックに通院するようになりましたが、うつ症状は悪化したためしばらく休職をしました。数か月後に精神症状は軽くなり復職できましたが、その後、出勤で会社近くまで行っても会社の敷地内に入れず自宅に引き返すことが見られるようになり、再び休職となりました。Cさんは独身で両親と同居していますが、以前、両親との間で金銭トラブルがあり、そのためか両親はCさんに対して厳しく接しているようです。

この3人の若者、診断は適応障害あるいはうつ病であり治療もされていますが、それだけでは安定した職場復帰は難しく、さらなる支援が必要です。Aさんについては、転籍先の職場の上司が理解を示し元の職場に戻れるように動いてくれて、それもあり精神症状は改善し復職して前向きに仕事が出来るようになりました。Bさんについては、Bさんの会社は以前より離職率が高く、心配していた父親がBさんと話し合いを繰り返し、会社の上司とも相談して、配置転換や転職の検討もすることとなりました。Cさんについては、精神科クリニック医師が両親を呼んで話をしてCさんがじっくり療養できるように両親に協力を求めて徐々にその効果が出ているとのことです。今更ですが、就労困難となってもそれぞれの状況を考慮した支援ができれば再び就労可能になる、その可能性が十分あるので医療者による治療だけでなく、職場の上司や家族など関係者が適切な支援を実行することはとても重要なことだと思っています。

《中島相談員の研修会》

2.研修会のご案内

新型コロナウイルス感染症の感染リスクに十分配慮して「三つの密(密閉・密集・密接)」を避ける対策を講じた上で、研修会を開催しています。

《ピュアリティまきびで開催する研修会》

●3/3(木)14:00~15:30『若手社員の職場適応支援のコツ』
→新入社員や若手社員が職場の風土に馴染むには時間がかかる時代になりました。せっかく採用した若手社員が離職しないよう、周囲ができる職場適応支援のコツを紹介します。研修終了後、岡山障害者職業センターからリワーク支援(復職プログラム)についての説明があります。(10分程度)

●3/11(金)14:00~15:30
『高年齢労働者の転倒災害防止対策としての運動 機能チェック』
→少子化の中、確実に勤労者数は減少し、定年延長とともに高年齢労働者が増えています。その中で、労働災害(主に転倒)を減らして生産性を維持・向上させるためには、個々の身体機能維持・向上が望まれます。まずはエイジフレンドリーガイドラインの中で紹介された体力チェックをしてみませんか?※身体測定あり。動きやすい服装とタオル持参でお越しください。

●3/16(水)15:00~17:00
『相談場面における傾聴の意義と技法(後編)』
→傾聴の基礎を学び、職場の相談場面に活かせるスキルを取得します。実際の傾聴を体験し、「聴く力」を身につけましょう。※グループワーク実施予定。

《YouTubeで視聴する研修会》

●3/1(火)『中小企業事業主のために産業医ができること』
→この研修では、主に中小企業事業主の皆様を対象に「産業医にできること」を解説します。主な内容は基本となる法的対応になりますが、「もっと積極的に産業医を活用して健康経営にも取り組みたい」と考えている事業主向けの話もありますので、産業医についてもっと知りたいという事業主様はぜひご参加ください。(90分)

●3/11(金)『健康診断結果の読み方(脂質異常症を中心に)』
→定期健診項目のうち有所見率が最も高いのが血中脂質検査です。動脈硬化を進める重要な危険因子である脂質異常症の分類、管理目標値、食事療法などに加えて肝機能障害や肥満などに関しても解説を予定しています。※2/25と同内容(90分)

●3/17(木)
『THP指針改正の解説とこれからの健康保持増進の視点』
→「事業場における労働者の健康保持増進のための指針(通称THP指針)」が改正されました。「個人から集団への措置」「医療保険者や地域保健とのコラボヘルス」「Sport in lifeや歯科口腔保健」など新しい概念が盛り込まれています。これらをメインに、これからの健康保持増進に必要な視点について解説します。(90分)

《Zoomで参加する研修会》

●3/8(火)13:30~15:00
メンタルヘルス対策導入研究会
→面接シナリオを用いた標準的メンタルヘルス対策について、複数企業の人事労務担当者が固定メンバーで意見交換・事例検討を2ヶ月ごとに継続して行います。(原則第2火曜日 13時30分~15時)
※本年度より、4月からでなくても、随時での参加開始が可能になりました。原則として、6回連続での参加で修了とします(単回のみでの参加はできません)。参加を希望される方は、お問い合わせフォームからご連絡ください。
満席の場合は、空席待ちとして登録させていただき、順次ご案内させていただきます。また、参加を検討するために、オブザーバー参加を希望する方は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

●3/24(木)16:15~17:00
『モジュール構成による新型研修シリーズ12/12』
→(1)高ストレス者面接
(2)希望テーマ(受付中)
(3)面接シナリオ「労災(負傷)からの復職」
研修日1週間前から講義の動画をYouTubeにて配信しますので、ご視聴ください。研修会当日、16:15~17:00にZoomミーティングにて質疑応答を行います(動画未視聴の方向けに15:30~16:15にZoomにて動画を公開します)。

◆参加申し込みはこちら

3.産業医研修会(2022年4月)

日時:4月21日(木)14:30~16:30
会場:岡山県医師会館三木記念ホール

演題1:産業医学総論-最近の産業医学の動向-
演題2:これからの産業保健のあり方(仕事と治療の両立支援など)

講師:高尾総司(岡山大学大学院疫学・衛生学分野 准教授)
単位数:生涯専門2単位
受講料:無料

お申込みはこちら:https://okayamas.johas.go.jp/2022-0421/


日時:4月27日(水)15:00~16:30
会場:ピュアリティまきび(岡山市北区下石井2-6-41)

研修テーマ:コロナ禍における‟産業保健”について

講師:徳弘雅哉(三菱自動車工業(株)水島製作所専属産業医)
単位:生涯専門1.5単位
受講料:無料

お申込みはこちら:https://okayamas.johas.go.jp/2022-0427/


次回の第171号は2022年4月初旬に配信予定です。