岡労発基0406第33号
岡労発安0406第25号
令和5年4月6日

岡山産業保健総合支援センター所長殿

岡山労働局長

職場におけるウイルス性肝炎対策に関する協力の要請について

肝炎対策の推進につきましては、日ごろから格別の御協力を賜り、厚く御礼申し上げます。

ウイルス性肝炎は、国内最大級の感染症と言われており、これに対する対策を総合的に推進するため、肝炎対策基本法(平成21年法律第97号)に基づき、肝炎対策基本指針(平成28年厚生労働省告示第278号。以下「指針」という。)(別紙)を定めています。本指針は、5年ごとに見直しを行っており、令和4年3月7日に見直しを行いました。

国は、職域におけるウイルス性肝炎に対する対策について、これまで、「職域におけるウイルス性肝炎対策に関する協力の要請について」(平成23年7月28日付け健発第0728第1号、基発0728第1号、職発0728第1号厚生労働省健康局長・労働基準局長・職業安定局長通知)により協力を要請してきたところですが、見直し後の指針において、その一層の対策の推進が記されていることから、今般、改めて周知及び協力の要請を行うことといたします。

ウイルス性肝炎につきましては、肝炎ウイルスに感染しているものの、肝炎の自覚のない者が多数存在すると推定されること、感染経路等や治療に対する国民の理解が十分でないこと、一部において、肝炎の患者・感染者に対する不当な差別が存在すること等の問題が指摘されています。

また、従来は、副作用が多く、注射での投与が必要なインターフェロン治療が肝炎の主な治療でしたが、現在では、副作用が少なく、内服で肝炎ウイルスを抑制、排除できる治療が主流となりました。心身などへの負担がより少ない治療が可能となったことにより、肝炎患者等が、働きながら治療を受けられる環境の整備(治療と仕事の両立支援)や、肝硬変・肝がんになる前の肝炎の段階での早期発見・早期治療に向けたより一層の普及啓発を行うことがさらに重要となっております。

労働者の中には、肝炎ウイルス感染に対する自覚のない方や、感染に気付いていても、早期の治療をためらう方がいると考えられることから、肝炎の患者・感染者が早期に感染を自覚し、早期に治療を受けられる環境を作るためには、事業者及び保険者の皆様の御理解、御協力が不可欠です。

つきましては、下記の事項について、改めて御理解をいただき、関係者等への周知方、御協力をお願いいたします。

また、労働者の皆様に対する肝炎ウイルス検査の受診勧奨等の際には、別添のリーフレットを御活用いただきますようお願いいたします。

肝炎総合対策の推進(厚生労働省)

リーフレット

  1. 労働者に対して、肝炎ウイルス検査を受けることの意義を周知し、検査の受診を呼びかけること。
  2. 労働者が肝炎ウイルス検査の受診を希望する場合には、受診機会拡大の観点から特段の配慮をすること。
  3. 本人の同意なく本人以外の者が不用意に検査受診の有無や結果などを知ることのないよう、プライバシー保護に十分配慮すること。
  4. 労働者が肝炎の治療と仕事の両立が行えるよう、「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」等を踏まえ、通院に対する休暇の付与等、特段の配慮をすること。
  5. 職場や採用選考時において、肝炎の患者・感染者が差別を受けることのないよう、正しい知識の普及を図ること。

以上

別紙:関係法令

○肝炎対策基本法(平成21年法律第97号)抄

(医療保険者の責務)
第5条医療保険者(介護保険法(平成9年法律第123号)第7条第7項に規定する医療保険者をいう。)は、国及び地方公共団体が講ずる肝炎の予防に関する啓発及び知識の普及、肝炎検査に関する普及啓発等の施策に協力するよう努めなければならない。

(肝炎対策基本指針の策定等)
第9条厚生労働大臣は、肝炎対策の総合的な推進を図るため、肝炎対策の推進に関する基本的な指針(以下「肝炎対策基本指針」という。)を策定しなければならない。

○肝炎対策の推進に関する基本的な指針(平成28年厚生労働省告示第278号)抄

第1 肝炎の予防及び肝炎医療の推進の基本的な方向

(2)肝炎ウイルス検査の更なる促進
肝炎ウイルスの感染経路は様々であり、個々人が肝炎ウイルスに感染した可能性があるか否かを一概に判断することは困難であることから、全ての国民が、少なくとも一回は肝炎ウイルス検査を受検する必要があると考えられる。特に、肝炎ウイルス検査の未受検者が、自らの健康や生命に関わる問題であることを認識し、できる限り早期に受検するとともに、その結果を認識し、検査結果に応じた受診等の行動につながるようにすることが重要である。その実現に向けては、肝炎ウイルス検査の受検の必要性について、広く国民に普及啓発を行うと同時に、年齢等に焦点を絞って普及啓発を行うことも重要である。

このため、肝炎ウイルス検査の受検体制を整備し、特に肝炎ウイルス検査の未受検者に対して受検の勧奨及び普及啓発を行うことが必要であるが、引き続き、地方公共団体等による検査以外に職域において検査を受けられる機会を確保する等の取組を進めるとともに、検査結果が陽性である者に対して、C型肝炎は高い確率でウイルス排除が可能であること、B型肝炎もウイルス抑制が可能であることの理解を促進しつつ、早期受診のメリット等の説明をする等、適切な受診を促進するためのフォローアップ体制の整備に重点的に取り組んでいくことが必要である。

また、従来は、肝炎患者等は治療と就労の両立が困難であったが、医療の進歩により心身などへの負担がより少ない治療が可能となったため、治療と就労の両立に向けたより一層の普及啓発を行うことが重要である。

第3 肝炎検査の実施体制及び検査能力の向上に関する事項

(2)今後取組が必要な事項について
ウ 国及び地方公共団体は、相互に協力して、特に肝炎ウイルス検査の未受検者に対して肝炎ウイルス検査に関する効果的な広報に取り組む。あわせて、肝炎ウイルス検査の受検について、職域において健康管理に携わる者や、医療保険者、事業主等の関係者を通じ、職域において受検勧奨が行われるような取組を図る。

エ 国は、多様な検査機会の確保の観点から、健康保険法(大正11年法律第70号)に基づき行われる健康診査等及び労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)に基づき行われる健康診断時に併せて肝炎ウイルス検査が実施されるよう、地方公共団体や拠点病院等と連携し、研究班の成果等も踏まえ、医療保険者や事業主等の関係者の理解を得て、その促進に取り組む。また、医療保険者や事業主が肝炎ウイルス検査を実施する場合の検査結果について、プライバシーに配慮した適正な通知と取扱いがなされるよう、医療保険者及び事業主に対して引き続き周知を行う。

第4 肝炎医療を提供する体制の確保に関する事項

(1)今後の取組の方針について
(中略)
また、都道府県は、その区域内の市区町村と適切な情報交換を行うとともに、医療機関及び保険者等の地域や職域において健康管理に携わる者を含めた関係者の協力を得ながら、肝炎患者等に対する受診勧奨及び肝炎ウイルス検査後のフォローアップに関する取組を推進することにより、肝炎患者等の適切な医療機関への受診につなげる必要がある。

あわせて、国は、都道府県と市区町村間のフォローアップ事業における情報共有の実態を調査しつつ、その好事例を展開する等の施策を検討するとともに、精密検査の受診率の把握にも取り組む必要がある。受検、受診、受療及びフォローアップの全体的な状況について、網羅的なデータを把握することは困難ではあるものの、都道府県や市区町村との連携を深め、引き続き把握に取り組む。

さらに、これらの取組については、居住する地域にかかわらず適切な肝炎医療を等しく受けることができる肝疾患診療体制の確保を目指し、都道府県の実情に応じて推進する必要がある。また、その実施状況を把握し、効果的であるか適宜検証するとともに、必要に応じて情報交換を行いながら実施する必要がある。

また、心身等への負担がより少ない治療が可能となったことや、「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」等を踏まえ、肝炎患者等が、働きながら継続的に治療を受けることができるよう、事業主、職域において健康管理に携わる者及び労働組合をはじめとした幅広い関係者の理解及び協力を得られるように啓発を行う必要がある。

また、就労支援に関する取組について、肝炎患者の就労に関する総合支援モデル事業の成果も活かしつつ、その推進を図る必要がある。

(中略)

(2)今後取り組みが必要な事項について
オ 国は、肝炎情報センターと連携して、地域や職域において健康管理に携わる者が肝炎患者等に対して提供するために必要な情報を取りまとめるとともに、地方公共団体、拠点病院等が、こうした情報を医療保険者、事業主等へ提供できるよう、技術的支援等を行う。あわせて、国は、健康管理に携わる者を通して、肝炎患者等に対し適切な情報提供が図られるような取組を推進する。

ク 国は、肝炎への理解を図るための知識や取組事例等を踏まえた肝炎患者等に対する望ましい配慮のあり方について、事業主等に対して分かりやすく啓発するための検討を引き続き行う。国は、その成果を活用し、地方公共団体及び拠点病院とも連携しながら、事業主等へ普及啓発を行う。

ケ 国は、就労を維持しながら適切な肝炎医療を受けることができる環境の整備等について、各事業主団体に対し、協力を要請する。

加えて、国、地方公共団体、拠点病院等は、心身等への負担がより少ない治療が可能となったことを踏まえ、働きながら適切な肝炎医療を受けることができるよう、必要に応じて職域において健康管理に携わる者等の協力を受けながら、事業主等に対して肝炎に関する啓発等を行う。

第8肝炎に関する啓発及び知識の普及並びに肝炎患者等の人権の尊重に関する事項

(1)今後の取組の方針について

(中略)

また、早期に適切な治療を促すため、肝炎患者等が肝炎の病態及び治療に係る正しい知識を持つことができるよう、普及啓発及び情報提供を積極的に行うとともに、肝炎患者等の人権を守るため、肝炎患者等が不当な差別を受けることなく、社会において安心して暮らせる環境づくりを目指し、肝炎患者等とその家族等、医療従事者、事業主等の関係者をはじめとした全ての国民が、肝炎について正しい知識を持つための普及啓発を推進する必要がある。

その際、「人権教育・啓発に関する基本計画」(平成23年4月1日閣議決定)において、「感染症については、まず、治療及び予防といった医学的な対応が不可欠であることは言うまでもないが、それとともに、患者、元患者や家族に対する偏見や差別意識の解消など、人権に関する配慮も欠かせないところである」とされていることにも十分配慮するものとする。

(2)今後取組が必要な事項について
ア国、地方公共団体等は、毎年七月の世界肝炎デー、日本肝炎デー及び肝臓週間において、肝炎に関する集中的な普及啓発を行う等の取組を行う。あわせて、国及び地方公共団体が連携し、医療関係者、関係学会、事業主、肝炎患者等その他の関係者の協力も得ながら、効果的な普及啓発を行う。

オ 国及び地方公共団体は、肝炎患者等への受診勧奨を行うため、必要に応じて肝炎情報センター、拠点病院等と連携し、医療保険者、医師その他の医療従事者の団体、職域において健康管理に携わる者の団体、事業主団体等の協力を得て、誰もが肝炎ウイルスに感染する可能性があることや肝炎検査と早期の受診・受療の必要性等、肝炎患者等に対する偏見や差別が存在すること等の観点も含め、肝炎についての基本的な理解を得られるように取組を行う。

カ 国は、就労を維持しながら適切な肝炎医療を受けることができる環境の整備等について、各事業主団体に対し、協力を要請する。

加えて、国、地方公共団体、拠点病院等は、心身等への負担がより少ない治療が可能となったことを踏まえ、働きながら適切な肝炎医療を受けることができるよう、必要に応じて職域において健康管理に携わる者等の協力も受けながら、事業主等に対して肝炎に関する啓発等を行う。

ケ 国は、医療保険者や事業主が肝炎ウイルス検査を実施する場合の検査結果について、プライバシーに配慮した適正な通知と取扱いがなされるよう、医療保険者及び事業主に対して引き続き周知を行う。