手や足、背骨(脊椎)や骨盤など、体を支えて動かす働きのある器官を運動器と言い、これらの運動器にケガ(骨折や捻挫)などの外傷が加わると、『立つ』『歩く』といった日常的な動作に大きな支障が出ます。この状態を「運動器外傷」と言います。
本研究では、運動器外傷を受けた患者について、年齢・性別・職業などの基本情報、骨折部位・骨折型・治療法などの外傷に関する情報、およびリハビリテーション・復職など受傷後の経過に関する情報などを「運動器外傷データベース」に収集し分析を行っています。
分析により運動器外傷患者の“QOL回復”や“復職”に対して“影響する要因”を明らかにすることで、早期復職や治療と仕事の両立支援につなげていくことを目的としています。
「運動器外傷データベース」に登録された1,233症例のうち受傷時に就労していた就労評価対象者983例の予後について追跡調査(6か月後・1年後・2年後フォローアップ)を行いました。フォローアップ率は6か月後72.1%、1年後69.1%、2年後47.4%でした。
また、受傷後6か月・1年・2年の時点で就労状況が判明した症例を対象に、復職状況を調査した結果、受傷6ヵ月後の復職率は76.4%、1年後は82.3%、2年後は85.6%でした。
復職に影響する要因である、「年齢」、「肉体労働」、「正規雇用」、「労災保険」、「開放骨折」、「下肢・骨盤骨折」、「疼痛」、「深部感染」のうち、特に「正規雇用」は復職を促進する方向に、「開放骨折」「疼痛」は復職を阻害する方向に、全期間を通じて、それぞれ復職に影響していることがわかりました。
このことから、骨折患者の復職対策として、『非正規雇用』・『開放骨折患者』に対しては早期より復職・両立支援の介入を開始することが重要であり、治療としては『感染制御』・『疼痛管理』が重要であることが示唆されました。
本研究の詳細については、「労災疾病等医学研究普及サイト」をご覧ください。
→https://www.research.johas.go.jp/undouki2018/index.html