8月31日、9月1日の2日間で開催された化学物質の自律的管理に向けた講習会には、約500名参加いただきました。講師の城内博先生は、3時間にわたり、化学物質の自律的管理について詳細かつ丁寧に講演され、講習会終了後は、参加者からの個別の質問に1時間近く対応されていました。
8月31日の岡山会場においては、講演が講習会終了時刻まで続いたため、事前質問に回答ができませんでした。そこで、岡山会場に寄せられた事前質問につきまして、城内先生の監修のもと、Q&Aを作成しましたので、公表します。
なお、質問に関しては、ほぼ原文のまま記載しています。(2023年9月)
参考:
- 化学物質による労働災害防止のための新たな規制について~労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和4年厚生労働省令第91号(令和4年5月31日公布))等の内容~(厚生労働省)
- 「化学物質の自律的管理」特設ページ
- 化学物質の自律的管理 無料訪問サービス
リスクアセスメント結果に基づくばく露低減措置が求められますが、リスクアセスメント結果からの対応(ばく露低減措置方法、ばく露測定方法など)の具体的な運用事例・方法について教えて頂きたいです。
濃度基準値が定められたリスクアセスメント対象物質については、「化学物質による健康障害防止のための濃度基準の適用等に関する技術上の指針」があります。
化学物質による健康障害防止のための濃度基準の適用等に関する技術上の指針
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001091754.pdf
化学物質の自律的管理が進むと、現在の一部の化学物質の規制である有機溶剤中毒予防規則や特定化学物質障害予防規則などは、今後どのようになりますか。規制がなくなったりしますでしょうか。
職場における化学物質等の管理のあり方 に関する検討会報告書によりますと、「特定化学物質障害予防規則、有機溶剤中毒予防規則、鉛中毒予防規則、粉じん障害防止規則、四アルキル鉛中毒予防規則(以下「特化則等」という)は、自律的な管理の中に残すべき規定を除き、5年後に廃止することを想定し、その時点で十分に自律的な管理が定着していないと判断される場合は、特化則等の規制の廃止を見送り、さらにその5年後に改めて評価を行うことが適当である。」とされています。
なお、今回の規則改正においても、化学物質管理の水準が一定以上の事業場につきましては、個別規制の適用除外制度が盛り込まれています。
化学物質規制は大転換とありますが、何がどのように変わるのでしょうか?
化学物質の自律的管理に向けた講習会(以下、講習会といいます。)の中で、説明しました。
鉱物の中の二酸化珪素のうち、結晶質シリカの含有量を調べたいのですが正確な測定方法はあるのでしょうか。
X線回折法で、結晶質シリカの種類、含有率を測定できます。
自律的管理ということでアルコール等の危険物を取り扱っているが、法令遵守とは違う方法とは何か。関連の業種で、どのような化学物質が自律的管理されているか。
自律的な管理とは、国はばく露濃度等の管理基準を定め、危険性・有害性に関する情報の伝達の仕組みを整備・拡充し、事業者はその情報に基づいてリスクアセスメントを行い、ばく露防止のために講ずべき措置を自ら選択して実行することを原則とする仕組みをいいます。
法令順守は、従来どおりですが、個別規制によって定められた措置を実行するのではなく、ばく露防止のために講ずべき措置を自ら選択して実行することをいいます。
なお、今回の規則改正では、特化則等が適用される化学物質は、自律的管理はできず、個々の規制に則った措置を講じる必要があります。
建設業の安全室に所属しています。来年の化学物質の法改正も合わせて社内で整えている状態です。来年の改正で重要な、何をしておけば良いことがあればお伺いしたいです。
来年の改正で重要な、何をしておけば良いことについては、講習会で説明しましたが、令和6年4月の規則改正で、事業者の対応すべきは、以下のものです。
- ばく露を濃度基準値以下にすること
- リスクアセスメント等に基づく健康診断の実施・記録作成等
- 化学物質管理者・保護具着用管理責任者の選任義務化
- 雇入れ時等教育の拡充
- 第三管理区分事業場の措置強化
建災防からリスクアセスメントマニュアル(案)も公表されていますので参考にして下さい。
建設業労働災害防止協会「リーフレット・調査研究報告等」
https://www.kensaibou.or.jp/safe_tech/leaflet/files/a3f84ac5d1010416bf7f55d3d9037200731bbbb0.pdf
歯科健診の対象は「常時従事する労働者」とあるが、週2回程度の扱いなら必要ないのですか?また、扱う量は関係ないのですか?
「常時従事する労働者」とは、「継続して当該業務に従事する労働者」のほか、「一定期間ごとに継続的に行われる業務であってもそれが定期的に反復される場合には該当する」とされています。週2回程度の扱いでも定期的に反復される場合には対象となります。
また、取り扱う量については、明確な決まりはありません。
歯科健診については、健診のガイドラインに触れられていますのでご参照ください。
健診のガイドライン(e-Gov ポータル)
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000258188
建設会社で主に土木工事を行っております。作業は屋外で化学物質といえばセメント、塗料、溶接作業時に発生するヒュームなどが関係してきます。そういった環境、条件での自律的管理について何かご教示お願い致します。
塗料に含まれる特定化学物質や溶接ヒュームは、現行の個別規制が適用され、自律的管理の対象とはなりません。
セメントのホルトランドセメントなど、リスクアセスメント対象物がリスクアセスメント、自律的管理の対象となります。
建災防からリスクアセスメントマニュアル(案)も公表されていますので参考にして下さい。
建設業労働災害防止協会「リーフレット・調査研究報告等」
https://www.kensaibou.or.jp/safe_tech/leaflet/files/a3f84ac5d1010416bf7f55d3d9037200731bbbb0.pdf
保護具着用管理責任者は、必ず化学物質管理者の指揮下で職務を遂行する必要があるか。化学物質管理者と同等の立場で保護具の着用管理に当たることは可能か。また、複数の化学物質管理者が事業場内の作業場を分割して担当する場合、一人の保護具着用管理責任者が複数の作業場を一括して保護具の管理に当たることは可能か。
保護具着用管理責任者については、「化学物質管理者を選任した事業者は、リスクアセスメントの結果に基づく措置として、労働者に保護具を使用させるときは、保護具着用管理責任者を選任し、…」とありますが、化学物質管理者の職務として、保護具着用管理責任者の指揮はありませんし、それぞれの職務は異なるものですので、指揮下で職務を遂行すべきものではありませんし、兼務も可能とされています。
ですから、その配置については、事業場の実情に応じて、それぞれ選任すべきものです。
雇用関係の無い労働者(研究者等)が自社の事業場内で定期的に化学物質を取り扱う場合、がん原性物質の作業記録を作成保存するのは、作業場を管理する事業者(自社)か、作業者と雇用関係を持つ事業者(派遣元)か。
事業者は、「労働者の記録を作成し」、となっていますので、がん原性物質の作業記録を作成保存するのは、作業者と直接の雇用関係を持つ事業者が行うこととなります。
しかしながら、労働者派遣に該当する場合、まだ、該当する規則の根拠条文が示されていませんが、労働安全衛生法第22条が根拠条文であれば、その措置の履行は、派遣先となります。そして、派遣元に、その記録の写しを送付することになると思われます。
がん原性物質の作業記録は、基本的に労災補償を想定していますので、記録の保存が継続的に行われる方法を選択すべきと思います。
8時間濃度基準値のみが定められている物質について、短時間作業(例えば1時間)しか実施していない場合に、どのような測定を実施すれば良いか。検知管を用いた短時間評価値を1/8にして、8時間濃度基準値と比較する、あるいは短時間評価値と8時間濃度基準値の3倍と比較することは可能か。
短時間作業が断続的に行われる場合や、一労働日における化学物質にばく露する作業を行う時間の合計が8時間未満の場合は、非ばく露作業時間について、ばく露における物質の濃度をゼロとみなして、ばく露作業時間及び非ばく露作業時間における物質の濃度をそれぞれの測定時間で加重平均して8時間時間加重平均値を算出するか、非ばく露作業時間を含めて8時間の測定を行い、当該濃度を8時間で加重平均して8時間時間加重平均値を算出することとされています。そうして算出した8時間時間加重平均値と8時間濃度基準値と比較することなります。
なお、8時間濃度基準値が定められており、かつ、短時間濃度基準値が定められていないものについて、当該物のばく露における15分間時間加重平均値が8時間濃度基準値を超える場合にあっては、当該ばく露の15分間時間加重平均値が8時間濃度基準値の3倍を超えないように努めることとされています。
現在のCREATE-SIMPLEのバージョン2.5では、8時間濃度基準値とばく露限界値が異なる物質があるが(アニリン、アセトニトリル、等多数)、施行日までに仕様の変更やばく露限界値の変更等があるのか。あるいは、使用者側で基準値を手入力して評価する必要があるのか。
CREATE-SIMPLEのバグも時折見つかり、修正作業を継続しているようです。少々お待ちください。
従来の化学物質リスクアセスメント対象物質(SDS発行対象)にはコントロールバンディング等のリスクアセスメントが実施されており、20230401安衛法改正対応を従来のリスクアセスメント結果(定性法)を用いることで満たすことは可能か?
リスクアセスメントの手法については、定性法、定量法のいずれでも可です。
濃度基準値1/2を超える場合、確認測定(個人曝露測定)が必要になるが、労働衛生機関等の測定機関で個人曝露測定が技術的に実施可能か(素人が想像する以上に正確に測定するのが困難なようで、日本国内においては難しいのではないかと専門家よりコメントあり、事前処理等を精密にしないと数値がでない)?
個人ばく露測定はだれがどのように実施するか行政から明確な指針等が出ていません。
RA対象物のうち濃度基準値がなくかつがん原生物質でない物質に、コントロールバンディング等の定性法RAしかしていない場合(シンプルクリエイトを実施していない)、数理モデルRAが求められることはありそうか?その場合の企業責任(行政、民事、社会的責任等の視点)は?
リスクアセスメントの手法については、いずれの手法でもよいので、事業場で選択してもらうこととなります。数理モデルRAを実施しなかったことによる企業責任は考えられません。
送風機のメーカーです。作業環境改善提案を実施するにあたり、どういった提案方法が良いのかを、教えて下さい。
対象事業場の実情に応じ対処すべきものと考えます。
取扱う事業者として自律的管理していく対応(取組)や範囲は明確になっていますか?
明確になっています。詳細は講習会で説明したとおりです。
ラベル表示対象物を他の容器に移し替えて保管について、内容物の名称やその危険性・有害性情報を伝達しなければならないが、サイズが様々な小分け容器に「内容物の名称」と「GHSラベル(絵表示)」を貼り付ければ良いのか?「文書の交付」でも良いことになっているが、小分け容器の使用場所・保管場所にSDSを備え付けるということで事足りるのか?「その他の方法」とはどのような例があるのか?
製造許可物質やラベル表示対象物を他の容器に移し替えて保管する場合は、「名称」と「人体に及ぼす作用(有害性情報)」を明示しなければなりません。
事業場内で別容器等で保管する場合の名称及び人体に及ぼす作用の明示について、容器へのラベル貼付以外の方法として、ラベル表示、SDSの閲覧、使用場所への掲示、必要事項を記載した一覧表の備え付け、記録媒体に記録しその内容を常時確認できる機器を設置すること等、各事業場での取扱い方法に応じて労働者に確実に伝達できる方法で実施してください。例えば、各容器にサンプル番号を付し、番号と名称及び人体に及ぼす作用を別途掲示等する方法も考えられます。(Q&Aより)
化学物質による労働災害防止のための新たな規制(労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和4年厚生労働省令第91号(令和4年5月31日公布))等の内容)に関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001092416.pdf
がん原性物質対象となる商品(混合物)を調査するに当たり、「指定物質(例:DDT、ウレタン)」ごとに含有しているか確認するのは非常に大変であるため、各SDSでGHS分類を確認し「発がん性:区分1」となっている商品を対象とする調査方法で良いか?
質問のとおりです。
会社としてCREATE-SIMPLEを採用しているが、リスクレベルが高め判定されており、評価した383物質の内126物質が?以上(?:76、?:50)となった。対策を検討しように局排だらけになり膨大な投資となってしまうが、他社での改善事例や進め方などの紹介事例はあるか?
化学物質による健康障害防止のための濃度の基準の適用等に関する技術上の指針によりますと、CREATE-SIMPLEでの評価の結果、労働者のばく露の程度が8時間濃度基準値の2分の1程度を超えると評価された場合は、確認測定を実施することされており、その結果により、リスク低減措置を講じることなり、危険性又は有害性の低い物質への代替、工学的対策、管理的対策、有効な保護具の使用という優先順位に従い、対策を検討し、労働者のばく露の程度を濃度基準値以下とすることを含めたリスク低減措置を実施することとなります。
他社での改善事例はまだ入手していません。
多種の化学物質を取り扱う場合、すべての物質について個人ばく露濃度を「個人サンプリング法」で測定しなければならないでしょうか。クリエイトシンプルなどの推定ばく露濃度を用いても良いでしょうか。また、クリエイトシンプルにデータがない物質の場合は、やはり個人サンプリング法で測定しなければならないでしょうか。
個人サンプリング法ですべての物質について測定することも可能ですが、化学物質による健康障害防止のための濃度の基準の適用等に関する技術上の指針によりますCREATE-SIMPLEで、スクリーニングを実施し、その結果、労働者のばく露の程度が8時間濃度基準値の2分の1程度を超えると評価された場合は、確認測定を実施することされており、その結果により、リスク低減措置を実施することなります。
個人ばく露測定と個人サンプリング法は異なりますのでご注意ください。
自律的な管理において、個人サンプリング法で測定しなければならないという定めはありません。
今度の化学物質の法規制により、リスクアセスメント等が盛り込まれるようになりました。ですが、化学物質の隔離や代替を行っていくための指標等を使って作業方法の変更や化学物質の代替をおこなわなくてはならないのですが、多くの化学物質や取り扱っているものに関して、規制がないものも多数存在しています。大阪の印刷会社でも、それにより胆管癌により亡くなられた方も実際にいます。そのような規制がないもの、また、規制が緩いものについてご教示いただけないでしょうか?
GHS分類で有害性が認められるが、個別規制の対象となっていない化学物質についての対策が、「化学物質の自律的管理」です。詳細は講習会で説明したとおりです。
建設業です。元請け会社や施工管理の立場で作業そのものは行わず、指導監督するものであっても、呼吸用保護具の対応が必要ですか?化学物質管理者や保護具着用管理責任者の選任も必要ですか?
自ら化学物質の取り扱わない元請事業者は、化学物質管理者や保護具着用管理責任者の選任は要しませんが、元請け事業者としての必要な措置に対し、下請け事業者に周知等しなければならないことがあることには留意してください。
基本的にばく露が考えられる場合にはどのような立場の人であれ、リスクアセスメントが必要になります。そのような事業場では化学物質管理者の選任が必要です。また化学物質管理者が選任され、リスクアセスメントの結果、保護具着用が必要な場合には保護具着用管理者の選任も必要になります。
例:皮膚等障害化学物質を取り扱う業務等の一部を請負人に請け負わせるときは、請負人に対し適切な保護具を備えつけておくこと等により、これらを使用することができるように必要がある旨を周知させなければならない。(安衛則第594条)
管理者の権限と責務と罰則の範囲への理解が難しいです。そのため、管理者になって頂く方々へも頭を悩ます中で、不安が大きくなっています。何かあったとき、化学物質管理者が責任を問われるポイント・注意点はどこでしょうか?
化学物質管理者の職務を行っていないときは責任を問われることがあります。その場合、当然、化学物質管理者に職務を行わせるのは、事業者の責務ですので、事業者責任を問われることになります。
弊社本社や営業拠点において、リスクアセスメント対象物質としてエタノール(手指消毒用アルコール製剤)の使用がありますが、「主として一般消費者の生活の用に供するためのもの」に当たるとして「化学物質管理者」の選任は不要、という認識で間違いありませんでしょうか。
質問のとおりですが、「主として一般消費者の生活のように供するためのもの」の解釈に、「家庭用品品質表示法(昭和37年法律第104号)に基づく表示がなされている製品、その他一般消費者が家庭等において私的に使用することを目的として製造又は輸入された製品。いわゆる業務用洗剤等の業務に使用することが想定されている製品は、一般消費者も入手可能な方法で譲渡・提供されているものであっても除く。」が加わっています。
化学物質管理者の選任要件について、保護具着用管理責任者とは違い、第一種衛生管理者等の有資格者に限定しなかった背景について教えていただきたい。
化学物質管理者に求められている職務を遂行するための教育カリキュラムには、従来の資格者の教育では十分ではなかった、危険性・有害性に関する情報伝達及びリスクアセスメント関連事項が含まれています。そのため従来の有資格者は選任要件には入っていません。
化学物質のリスクアセスメント支援ツールはクリエイトシンプルやコントロールバンディングなどがありますが、社内に化学物質に詳しい者がいないとき、一般的に最も推奨される支援ツールが何か教えていただきたい。
厚生労働省では、CREATE-SIMPLEを推奨しています。
第三管理区分と判定された場所での濃度測定について、原則として個人サンプリング法か個人ばく露測定によることになりますが、どちらかの測定を優先すべき特定の状況があれば教えていただきたい。
自律的に事業場が判断すべきものです。個人サンプリング法・個人ばく露測定、どちらでも良いです。
室温でガスの状態となる対象物質は、CREATE-SIMPLEでは有害性の評価ができないので、必然的に確認測定を実施することになるか。
質問のとおりです。必ずしも確認測定は必要としていません。
簡易測定であっても、実施者は有資格者(作業環境測定士等)でなければならないか。化学物質管理者では不十分か。
作業環境測定士であることは、望ましいですが、必ずしも、要件ではありません。ただ、必要な知識を有する者である必要はあります。
「発がん性が区分1Aに分類されている化学物質を含むスプレー缶」を週3回程度使用する事業場において、実施しなければならない法的対応についてご教示下さい。
下記の使用条件で化学物質を取扱う場合に実施しなければならない法的対応についてご教示下さい。
使用条件
使用している製品
・発がん性が区分1Aに分類されている化学物質を含むスプレー缶
・発がん性物質は含まないがそれ以外の化学物質を含むスプレー缶
使用場所:床面積100㎡程度の室内
使用頻度:週3回程度
1回当たりの使用量:噴霧時間2秒程度を、時間を空けて3~4回程度。
質問
・環境測定を実施しなければならないのか。
・ばく露量を測定しなければならないのか。
・リスクアセスメントを実施しなければならないのか。
・防毒マスクは必ず着用しなければならないのか。
・化学物質管理責任者を選任しなければならないのか。
・化学物質管理責任者を選任しなければならないならば、専門的講習の受講は不要か。
・保護具着用管理責任者の選任は必要か。
・作業者の健康診断は必要か。
・労働者のばく露状況の記録を作成しなければならないか。
回答
- 特化則等に該当しない場合には、作業環境測定は不要です。
- ばく露量の測定は、法令上要求されませんが、濃度基準値が設定されている化学物質であれば、濃度基準値との比較のためばく露量の測定が必要となります。
- リスクアセスメント対象物については、リスクアセスメントが必要となる場合があります。
リスクアセスメント指針において、必要となるのは、
ア リスクアセスメント対象物を原材料等として新規に採用し、又は変更するとき。
イ リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に係る作業の方法又は手順を新規に採用し、又は変更するとき。
ウ 過去に提供された安全データシート(以下「SDS」という。)の危険性又は有害性に係る情報が変更され、その内容が事業者に提供された場合
エ 濃度基準値が新たに設定された場合又は当該値が変更された場合
で、行うよう努めることとされているのが、次の場合です。
ア リスクアセスメント対象物に係る労働災害が発生した場合であって、過去のリスクアセスメント等の内容に問題があることが確認された場合
イ 前回のリスクアセスメント等から一定の期間が経過し、リスクアセスメント対象物に係る機械設備等の経年による劣化、労働者の入れ替わり等に伴う労働者の安全衛生に係る知識経験の変化、新たな安全衛生に係る知見の集積等があった場合
ウ 既に製造し、又は取り扱っていた物質がリスクアセスメント対象物として新たに追加された場合など、当該リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務について過去にリスクアセスメント等を実施したことがない場合
- 防毒マスクは、かならず着用しなければならないものではありません。自律的にばく露防止措置を決定していくこととなります。
- リスクアセスメント対象物を取り扱う事業場は、化学物質管理者を選任しなければなりません。
- リスクアセスメント対象物を取り扱う事業場で選任する化学物質管理者に化学物質管理者講習は不要です。
- リスクアセスメントの結果に基づく措置として、労働者に保護具を使用させるときは、保護具着用管理責任者を選任する必要があります。
- リスクアセスメント対象物健康診断は、リスクアセスメントの結果に基づき、必要と認めるとき、または、リスクアセスメント対象物にばく露したおそれがあるときに実施しなければなりません。
- 労働者のばく露の状況は、1年を超えない期間ごとに1回、定期に、記録を作成し、3年間保存しなければなりません。
弊社は化学物質の製造は行っていませんが、労働安全衛生法の改正により、化学物質のリスクアセスメントを勧められています。機械グリスや洗浄剤などの購入品に対しても実施が必要でしょうか?
リスクアセスメント対象物を取り扱う事業場は、リスクアセスメントの実施とその後のリスク低減措置が義務付けられています。機械グリスなどの購入品について、SDS(安全データシート)を確認の上、リスクアセスメントを実施してください。
ホルマリン管理について、再利用可能か?
ホルマリンの再利用については、わかりません。
作業記録等の30年間保存が必要ながん原性物質について。購入している資材について、SDS上「2.危険有害性の要約」の健康有害性には発がん性区分が 「分類できない」等となっているが、「11.有害性情報」にはがん原生物質の対象となっている物質の情報(発がん性区分1が含まれる等)が記載されている場合、作業記録等の30年間保存の対象となるのでしょうか。
30年間保存が必要ながん原性物質については、厚生労働省ホームページを確認してください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29998.html
保護具着用管理責任者の教育は事業者の責任で実施するものですか。また少人数の事業所の場合資格を有する者が一人しかいないという場合化学物質管理者との兼任は可能ですか。可能な場合のデメリットはありますか。
工事現場の管理を教えて欲しい。リスクアセスメント結果等に関する記録の作成・保存や労働者の意見聴取が義務付けられるが、措置の内容と労働者のばく露状況を、労働者の意見を聴く機会を設けとは、誰が、いつ(どれくらいの頻度で)、どのような方法で実施したら良いでしょうか。
呼吸用保護具着用管理責任者の資格要件については、保護具に関する知識及び経験を有すると認められるものされており、具体的には、
①化学物質管理専門家の要件に該当する者
②作業環境管理専門家の要件に該当する者
③労働衛生コンサルタント試験に合格した者
④第1種衛生管理者免許又は衛生工学衛生管理者免許を受けた者
⑤特定化学物質、鉛、四アルキル鉛、有機溶剤作業主任者
⑥安全衛生推進者等の選任に関する基準の各号に示す者(安全衛生推進者に係るものに限る。)
が例示されています。
なお、①~⑥に該当する場合であっても、「保護具の管理に関する教育」を受講することが望ましいこと。また、上記①~⑥に掲げる者に該当する者を選任することができない場合は、上記の保護具の管理に関する教育を受講した者を選任することとされています。
兼任は可能です。
保護具の管理に関する教育は、事業者の責務として実施する必要はありますが、必ずしも、事業者自ら実施する必要はありません。なお、岡山県労働基準協会で実施が予定されています。
建災防からリスクアセスメントマニュアルも公表されていますので参考にして下さい。
製品の原材料として多種多様の香料を使用しています。季節限定商品などでは使用量、使用期間が短いものも多いのですが、全てにリスクアセスメントが必要なのでしょうか。
リスクアセスメントの実施については、リスクアセスメント対象物の使用量の多寡、使用期間の長短に関係なく実施する必要があります。
なお、実施時期については、質問№23を参考にしてください。
化学物質取り扱い時の不浸透性保護衣を探していますが、見つかりません。どうしたらよいでしょうか。手袋もアセトン、トルエン、テトラヒドロフラン、メタノールなど使用するので、長持ちしません。最適な手袋がありませんでしょうか。
取り扱い化学物質に使用すべき保護衣、手袋の素材はメーカーにお聞きください。
護具着用管理責任者はどこまで責任を負うのでしょうか。工場は24時間操業ですが、自分の勤務時間ではないときも責任があるのでしょうか。純度の悪い製品(化学物質)や回収品には、場内で再処理を行うため品名と純度くらいしかラベルには書かれていないが、よいか。ドラムの本数・種類が多く、すべてには貼付出来ていないが生産時には危険性・有害性は説明している。
保護具着用管理責任者の職務は、保護具の適正な選択に関することなどの管理です。作業主任者のように作業の直接指揮という職務がないので、交替制での各直に選任する必要はありません。なお、保護具着用管理責任者の勤務時間外の時も、職務にある事項が適切に行われるよう管理する必要があります。
ラベル表示対象物を保管するときは、物質の名称と人体に及ぼす作用を保管容器等にラベル表示等により明示しなければなりません。明示の方法は、ラベル表示の他、文書交付、使用場所への掲示、必要事項を掲載した一覧表の備え付けなどの方法があります。
通知対象物質受入作業について。タンクローリーで通知対象物質を受け入れする際に貯蔵タンクへの移送までは納入業者が行い、弊社は立会いのみです。この作業においても暴露濃度の推定と低減対策の実施は必要でしょうか?
立ち合いのみでは、取り扱う作業に該当しません。ただ、納入業者は、取り扱う作業を行う事業者となりますので、ばく露の程度の低減措置を講じる必要があります。
化学物質管理者は科学的な知識が無くてもやっていけるものでしょうか?総務担当者で化学物質管理者になる際に注意する点が有れば知りたいです。
化学物質管理者は、製造事業場は、化学物質の管理に関する講習を修了した者又はこれと同等以上の能力を有すると認められる者、取扱事業場は、職務を担当するために必要な能力を有すると認められる者のうちから選任することとなっています。
従って、化学物質の管理に関する講習が理解できる知識、あるいは、職務を担当するために必要な能力は必要となります。このことから、化学物質の管理に関する講習あるいは準ずる講習を受講することが推奨されます。
化学物管理者は、有資格業務なのか?有機溶剤を使用するエリアで選任が必要なのか?または、工場単位での選任でいいのか?保護具着用選任者も同様資格の場合、いつから受講できるのか?
質問№31で説明したとおり。
有機溶剤もリスクアセスメント対象物ですので、有機溶剤を使用する事業者は、化学物質管理者の選任は、必要となります。ただ、選任は、事業場単位で選任すればよいので、必ずしも、有機溶剤使用エリアで選任は要しません。
岡山県では、化学物質の管理に関する講習、同準ずる講習は、岡山県労働基準協会で開催予定です。
当事業場では、家電リサイクル法に基づき、廃家電に含まれている冷媒フロンの回収、保管、出荷業務を日常的に行っております。今後自律的な化学物質管理が求められている中でクリエイト・シンプル法を用いた化学物質リスクアセスメントを行っていく予定です。そこで、冷媒フロンについてリスク評価を行う中で、混合冷媒についての評価はどのようなフローで行うべきでしょうか?
冷媒の混合比が一定であれば、その混合冷媒の引火点を測定して評価したほうがより効率的、安全に取り扱えると思います。
化学物質管理者の具体的な職務と役割について何をすればよいのでしょうか?自律的管理とは何をどこまで管理することを求められるのでしょうか?
化学物質の職務は、次のとおりです。
- ラベル・SDS等の確認
- 化学物質に関わるリスクアセスメントの実施管理
- リスクアセスメント結果に基づくばく露防止措置の選択、実施の管理
- 化学物質の自律的な管理に関わる各種記録の作成・保存
- 化学物質の自律的な管理に関わる労働者への周知、教育
- ラベル・SDSの作成(リスクアセスメント対象物の製造事業場の場合)
- リスクアセスメント対象物による労働災害が発生した場合の対応
自律的な管理については、講習会で説明しています。
安衛法に基づく作業記録についてどのレベル感で作成すべきご教示下さい。健康診断と紐付く月単位で個人の作業内容、使用物質、使用量等が分かるもので十分なのか、月単位のエビデンスとなる詳細な日々の作業記録まで必要なのか、どのレベル感で目的を達することができるか教えて欲しい。
今回の安衛則の規則改正で、がん原生物質に係る作業記録の作成と30年間の保存が義務付けられています。
これは、晩発性の健康障害であるがんに対する対応を適切に行うためのもので、「各事象者で作成・保存しやすい形式で管理してください。」とされています。
がんに対する対応を適切に行うため、どこまで事業場で記録するかは、事業者の判断となりますが、詳細な日々の作業記録までは、規則では求めていないと思われます。
大まかな方向性は分かるが、一つ一つの製品に照らし合わせるとなるとかなりの時間と労力がかかる。手伝ってもらえる機関などないでしょうか?
岡山産業保健総合支援センターでは、化学物質の自立的管理に関する個別訪問支援を行っています。
また、化学物質管理専門家や作業環境管理専門家については、日本労働安全衛生コンサルタント会や日本作業環境測定協会のホームページで公表予定です。