定期健康診断

事業者は、常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期健康診断を行わなければなりません。

(1) 健康診断項目

①既往歴及び業務歴の調査
②自覚症状及び他覚症状の有無の検査
③身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
④胸部エックス線検査及び喀痰(かくたん)検査
⑤血圧の測定
⑥貧血検査
⑦肝機能検査
⑧血中脂質検査
⑨血糖検査
⑩尿検査
⑪心電図検査

(2) 健康診断項目の省略

[1]上記③、④、⑥、⑦、⑧、⑨、⑪の項目については、厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは、省略することができます。

[2]雇入れ時健康診断、海外派遣労働者の健康診断、有害業務従事者に対する健康診断を実施して1年以内の者については、その健康診断で実施した項目については省略することができます。

健康診断項目の省略についての留意事項(平成29年8月4日基発0804第4号)
一部においては、血液検査等の省略の判断を医師でない者が一律に行うなど、適切に省略の判断が行われていないことが懸念される。
労働安全衛生規則第44条第2項により、厚生労働省告示に基づく、血糖検査、貧血検査等を省略する場合の判断は、一律な省略ではなく、経時的な変化や自他覚症状を勘案するなどにより、個々の労働者ごとに医師が省略が可能であると認める場合においてのみ可能であること。

(3) 短時間労働者の定期健康診断について

事業主が労働安全衛生法の一般健康診断を行うべき「常時使用する短時間労働者」とは、次の[1]及び[2]のいずれの要件をも満たす労働者です。

[1]期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年(労働安全衛生規則第45条において引用する同規則第13条第1項第2号に掲げる業務に従事する短時間労働者にあっては6月。)以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用※されている者を含む。)であること。

[2]その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。

なお、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3未満である短時間労働者であっても上記の①の要件に該当し、1週間の労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数のおおむね2分の1以上である者に対しても一般健康診断を実施することが望ましいとされています。

※「引き続き使用」の要件に該当するか否かについては、勤務の実態に即して判断すべきものであるので、期間の定めのある労働契約を反復して短時間労働者を使用する場合、各々の労働契約期間の終期と始期の間に短時日の間隔を置いているとしても、必ずしも当然に継続勤務が中断されるものではないことに留意することとされています。

特定業務従事者の健康診断

事業者は、次の(1)対象業務に常時従事する労働者に対し、当該業務への配置替えの際及び6カ月以内ごとに1回、定期に、定期健康診断の項目について健康診断を行わなければなりません。

(1)対象業務

①多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
②多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
③ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
④土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
⑤異常気圧下における業務
⑥さく岩機、鋲(びょう)打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
⑦重量物の取扱い等重激な業務
⑧ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
⑨坑内における業務
⑩深夜業を含む業務
⑪水銀、砒(ひ)素、黄りん、弗(ふつ)化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
⑫鉛、水銀、クロム、砒(ひ)素、黄りん、弗(ふつ)化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
⑬病原体によって汚染のおそれが著しい業務
⑭その他厚生労働大臣が定める業務


対象業務については、次の通達が示されています。(昭23.8.12基収第1178号,昭42.9.8安発第23号)

  1. 多量の高熱物体を取扱う業務及び著しく暑熱な場所に於ける業務
    1. 高熱物体を取扱う業務とは,溶融又は灼熱された鉱物,煮沸されている液体等100℃以上のものを取扱う業務をいう。
    2. 著しく暑熱な場所とは,労働者の作業する場所が乾球温度40℃,湿球温度32.5℃、黒球寒暖計示度50℃又は感覚温度32.5℃以上の場合をいう。
  2. 多量の低温物体を取扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
    1. 低温物体を取扱う業務とは,液体空気,ドライアイスなどが皮膚にふれ又はふれるおそれのある業務をいう。
    2. 著しく寒冷な場所とは乾球温度-10℃以下の場所をいう。空気の流動ある作業場では気流1秒あたり1mを加える毎に乾球温度3℃の低下あるものとして計算する。
    3. 蔵倉庫業,製氷業,冷凍食品製造業における冷蔵庫,貯氷庫,冷凍庫等の内部における業務等が本号に該当する。
  3. ラジウム放射線、エックス線,その他の有害放射線にさらされる業務
    1. その他の有害放射線とは紫外線,可視光線,赤外線等であって強烈なもの及びラジウム以外の放射能物質例えば,ウラニウム,トリウム等よりの放射線をいう。
    2. 従って本号にいう業務とはラジウム放射線,エックス線,紫外線を用いる医療,検査の業務,可視光線を用いる映写室内の業務,金属土石溶融炉内の監視の業務等である。
  4. 土石,獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
    1. 土石,獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所とは,植物性(綿,糸,ぼろ,木炭等)動物性(毛,骨粉等)鉱物性(土石,金属等)の粉じんを,作業する場所の空気1㎤中に粒子数1,000個以上又は1㎥中15㎎以上含む場所をいう。
    2. 特に遊離けい石50%以上を含有する粉じんについてはその作業する場所の空気1㎤中に粒子数700個以上又は1㎥中10㎎以上を含む場所をいう。
  5. 異常気圧下における業務
    異常気圧下における業務とは,次に掲げる高気圧下又は低気圧下おける業務をいうこと。
    1. 高気圧下における業務
      1. 潜函工法,潜鐘工法,圧気シールド工法その他の圧気工法による大気圧をこえる圧力下の作業室,シャフト等の内部における業務
      2. ヘルメット式潜水器,マスク式潜水器その他の潜水器(アクアラング等)を用い,かつ,空気圧縮機若しくは手押ポンプによる送気又はボンベからの給気を受けて行う業務(女子年少者労働基準規則第9条に関しては,水深10m未満の場所における業務は,違法として取り扱わないこと。)
    2. 低気圧下における業務
      海抜3,000m以上の高山における業務(女子年少者労働基準規則第9条に関しては,屋内における業務は違法として取り扱わないこと。)
  6. さく岩機,鋲打機等の使用によって身体に著しい振動を与える業務
    1. 衝程70㎜以下及び重量2㎏以下の鋲打機はこれを含まない。
    2. 前号以外のさく岩機,鋲打機等を使用する業務はすべて本号に該当する。
  7. 重量物の取扱等重激な業務
    1. 重量物を取扱う業務とは,30㎏以上の重量物を労働時間の30%以上取扱う業務及び20㎏以上の重量物を労働時間の50%以上取扱う業務をいう。
    2. 重激な業務とは前号に準ずる労働負荷が労働者にかかる業務をいう。
  8. ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
    強烈な騒音を発する場所とは作業場に100㏈以上の強さの騒音のある場所をいう。
  9. 鉛,水銀,クロム,砒素,黄燐,弗素,塩素,塩酸,硝酸,亜硫酸,硫酸,二硫化炭素,青酸,ベンゼン,アニリン,その他これに準ずる有害物の粉じん,蒸気又はガスを発散する場所における業務
    1. 本号の場所とは作業場の空気がこれらの物質のガス,蒸気又は粉じんを左の限度以上に含有する場所をいう。
      鉛(1㎥中0.5㎎)水銀(1㎥中0.1㎎)クロム(1㎥中0.5㎎)砒素(1㏙)黄燐(2㏙)弗素(3㏙)塩素(1㏙)塩酸(10㏙)硝酸(40㏙)亜硫酸(10㏙)硫酸(1㎥中5㎎)一酸化炭素(100㏙)二硫化炭素(20㏙)青酸(20㏙)べンゼン(100㏙)アニリン(7㏙)
    2. その他これに準ずる有害物とは次のものをいう。
      鉛の化合物,水銀の化合物(朱のような無害なものを除く)燐化水素,砒素化合物,シアン化合物,クロム化合物,臭素,弗化水素,硫化水素,硝気(酸化窒素類)アンモニヤ,フオルムアルデヒド,エーテル,酢酸アミル,四塩化エタン,テレビン油,芳香族及びその誘導体,高濃度の炭酸ガス,ただし,分量軽少で衛生上有害でない場合はこれを含まない。

※なお、上記通達は、労働基準法第36条第6項の「健康上特に有害な業務」、第62条の「危険有害業務」、第64条の3の「妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務」、労働安全衛生規則第13条第1項に掲げる業務(常時500人以上の労働者を従事させる事業場)の解釈でもあります。

(2)実施時期

当該業務への配置替えの際及び6月以内ごとに1回(胸部エックス線検査及び喀痰(かくたん)検査については1年以内ごとに1回)

(3)健康診断項目

①既往歴及び業務歴の調査
②自覚症状及び他覚症状の有無の検査
③身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
④胸部エックス線検査及び喀痰(かくたん)検査
⑤血圧の測定
⑥貧血検査
⑦肝機能検査
⑧血中脂質検査
⑨血糖検査
⑩尿検査
⑪心電図検査

(4)健康診断項目の省略

[1]特定業務従事者の定期健康診断は、前回の健康診断において、上の(3)健康診断項目の⑥~⑨、⑪の項目について健康診断を受けた者については、医師が必要でないと認めるときは、その項目の全部又は一部を省略して行うことができます。

[2]上記③、④、⑥、⑦、⑧、⑨、⑪の項目については、厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは、省略することができます。

[3]雇入れ時健康診断、海外派遣労働者の健康診断、有害業務従事者に対する健康診断を実施して6カ月以内の者については、その健康診断で実施した項目については省略することができます。

定期健康診断等及び特定健康診査等の実施に係る事業者と保険者の連携・協力事項について

厚生労働省では、定期健康診断等及び特定健康診査等の実施に係る事業者と保険者の連携・協力事項について、事業者に対し、次のとおり要請しています。

高齢者の医療の確保に関する法律に基づき医療保険者が行うこととされている特定健康診査については、労働安全衛生法に基づく一般定期健康診断を既に実施した方については、実施を全部又は一部免除することとなっています。事業者の皆様におかれましては、医療保険者※1から求められた場合は、従業員の健康診断の結果を提供していただくようお願いします※2

また、特定健康診査の実施対象ではない40歳未満の方についても、医療保険者が事業者から健康診断の結果を入手し、保健事業に活用することを可能とする改正健康保険法等が令和4年1月に施行されます。

このため、40歳未満の従業員についても、施行後に医療保険者から求められた場合は、健康診断の結果を提供していただくようお願いします。
なお、健康診断の実施に当たっては、医療保険者への情報提供や連携を円滑に行うため、厚生労働省HPに掲載している※3「モデル健康診断委託契約書」や「一般健康診断標準問診票」をご活用ください。

※1:協会けんぽ、健保組合、市町村国保、国保組合、共済組合等を指します。
※2:法律に基づく第三者提供であるため、個人情報の保護に関する法律上、本人同意の取得が不要です。
※3:厚生労働省のサイトから、「定期健康診断実施関係」に入って取得して下さい。

厚生労事働省「事業場の皆様へ 9月は「職場の健康診断実施強化月間」です」[PDF 734KB]より

(2021年8月)