相談員便り

生死を分ける「死戦期呼吸」をご存じですか?(濱本貴史相談員)

目の前で人が突然倒れたとき、あなたは迷わず行動できるでしょうか?

「苦しそうだけれど、息はしているように見える」―そのような呼吸を死戦期呼吸と呼びます。今回は、救命の分かれ道となる死戦期呼吸(心肺蘇生開始の重要なサイン)を経験しましたので実例をお伝えします。

先日、あるウォーキングイベントで、60歳代の男性が突然心肺停止に至った事例です。

60歳前後の男性が坂を登った直後、糸が切れたように倒れました。周囲に人が集まり、取り囲まれるようにして輪の中心では倒れた男性が回復体位をとられていました。

後から坂を登ってきた医療関係者が倒れている男性を見つけ、駆け寄り呼びかけても反応はありませんでした。胸や腹部は動いておらず、下顎のみが動いていました(正しい呼吸なし)。医療関係者は心肺停止と判断、直ちに胸骨圧迫を開始しました。複数人で胸骨圧迫をつなぎ、救急隊到着後にAEDが使用され、心拍は再開、その後、搬送されていきました。

幸運にも医療関係者が通りかかったため、呼吸停止と判断、早期に蘇生開始に至りましたが、万が一医療関係者が通りかからなかったら、この方はどうなるでしょうか? 

この事例のように下顎のみが動き、胸腹部が動かない呼吸のことを「死戦期呼吸」と呼びます。

これは、心臓が止まった直後にみられる、不規則で断続的な呼吸様の動きです。しゃくりあげるような音や動きがあるため、知識がないと呼吸していると誤解されがちですが、これは正常な呼吸ではありません。

反応(呼びかけへの応答)がなく、普段どおりの安定した呼吸が確認できない場合、「死戦期呼吸」と呼ばれ、心肺蘇生開始の重要なサインとなります。ですが、知識がないと、正しく判断できず、様子を見るといったことになってしまう重要な知識です。

この事例からの学びは、「その呼吸、正しい呼吸ですか?」、死戦期呼吸を理解しているかということです。死戦期呼吸を理解していなければ、呼吸していると誤って判断し、心肺蘇生開始は遅れます。

しかし知っていれば、判断は変わります。反応がなく、普段どおりの呼吸がなければ、ためらわず胸骨圧迫を開始する。その決断が、救える命を救うことにつながります。

心肺停止は、職場でも、このようなイベントでも、突然起こります。その場に居合わせた私たち一人ひとりの知識と判断が結果を左右します。

今日この内容を読まれたことが、いざという時、皆様の助けになることを願っています。

参考 死戦期呼吸が出ていたにも関わらず、蘇生開始を判断できなかった事例
*心肺停止者が動画に出ますので、苦手な方は注意ください。
https://www.youtube.com/watch?v=zxyKaaA-JcM

■濱本相談員について
https://okayamas.johas.go.jp/consultation/advisor-profile/#hamamoto_takashi

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STOP!熱中症クールワークキャンペーン推進大会(岡山市・津山市)

『STOP!熱中症クールワークキャンペーン推進大会』を2会場で開催します。

令和8年に新たに示される「職場における熱中症防止のためのガイドライン」の説明、特別講演、事例発表、熱中症対策用品の展示・紹介を行います。

■岡山市会場

2026年6月5日(金)14:00~16:00
会場:おかやま西河原プラザ
https://okayamas.johas.go.jp/cool_2026/

■津山市開場

2026年6月8日(月)14:00~16:00
会場:グリーンヒルズ津山リージョンセンター
https://okayamas.johas.go.jp/cool_2026_608/

次回の第222号は2026年6月15日に配信予定です。