健康診断については、労働安全衛生法などの法令に基づく健康診断と厚生労働省が通達などにより、その受診を勧奨している指導勧奨による健康診断があります。(2021年4月)

法令に基づく健康診断

(1) 労働安全衛生法に基づく健康診断(安衛法第66条)

  1. 雇入時の健康診断(安衛則第43条)
  2. 定期健康診断(特定業務従事者の健康診断)(安衛則第44条、第45条)
  3. 海外派遣労働者の健康診断(安衛則第45条の2)
  4. 給食従業員の検便(安衛則第47条)
  5. 歯科医師による健康診断(安衛則第48条)
  6. 自発的健康診断(安衛則第50条の2)
  7. 特殊健康診断
    • 有機溶剤健康診断(有機則第29条)
    • 鉛健康診断(鉛則第53条)
    • 特定化学物質健康診断(特化則第39条)
    • 高気圧作業健康診断(高圧則第38条)
    • 電離放射線健康診断(電離則第56条)
    • 石綿健康診断(石綿則第40条)

(2) じん肺法に基づく健康診断(じん肺健康診断)

  1. 就業時健康診断(じん肺法第7条)
  2. 定期健康診断(じん肺法第8条)
  3. 定期外健康診断(じん肺法第9条)
  4. 離職時健康診断(じん肺法第9条の2)

法令略称

  • 安衛法:労働安全衛生法
  • 安衛則:労働安全衛生規則
  • 有機則:有機溶剤中毒予防規則
  • 鉛則:鉛中毒予防規則
  • 有機則:有機造材中毒予防規則
  • 特化則:特定化学物質障害予防規則
  • 電離則:電離放射線障害防止規則
  • 高圧則:高気圧作業安全衛生規則
  • 石綿則:石綿障害予防規則

(3)労働者の受診義務

  • 労働者は、事業者が行なう労働安全衛生法に基づく健康診断を受けなければなりません。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、受ける必要はありません。
  • じん肺健康診断については、正当な理由がある場合を除き、事業者が行うじん肺健康診断を受けなければなりません。ただし、事業者が指定した医師の行うじん肺健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師の行うじん肺健康診断を受け、当該エックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面など事業者に提出したときは、受ける必要はありません。
  • じん肺健康診断を行った場合においては、その限度において、労働安全衛生法第66条第1項又は第2項の健康診断を行わなくても差し支えありません。

(4)健康診断の費用について

法で事業者に健康診断の実施の義務を課している以上、事業者が負担しなければなりません。

(5)健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払について

  • 一般健康診断は、一般的な健康の確保を図ることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行なわれるものではないので、その受診のために要した時間については、当然には事業者の負担すべきものではなく、労使協議して定めるべきものですが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可決な条件であることを考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいとされています。
  • 特殊健康診断は、事業の遂行にからんで当然実施されなければならない性格のものであり、それは所定労働時間内に行なわれるのが原則となります。また、特殊健康診断の実施に要する時間は労働時間と解されるので、特殊健康診断が時間外に行なわれた場合には、割増賃金を支払わなければなりません。

指導勧奨による健康診断をすべき業務

  • 紫外線・赤外線にさらされる業務
  • 著しい騒音を発生する屋内作業場などにおける騒音作業
  • マンガン化合物(塩基性酸化マンガンに限る。)を取り扱う業務、又はそのガス、蒸気若しくは粉じんを発散する場所に おける業務→特定化学物質健康診断へ(R3.4)
  • 黄りんを取り扱う業務、又はりんの化合物のガス、蒸気若しくは粉じんを発散する場所における業務
  • 有機りん剤を取り扱う業務又は、そのガス、蒸気若しくは粉じんを発散する場所における業務
  • 亜硫酸ガスを発散する場所における業務
  • 二硫化炭素を取り扱う業務又は、そのガスを発散する場所における業務(有機溶剤業務に係るものを除く。)
  • ベンゼンのニトロアミド化合物を取り扱う業務又はそれらのガス、蒸気若しくは粉じんを発散する場所における業務
  • 脂肪族の塩化又は臭化化合物(有機溶剤として法規に規定されているものを除く。)を取り扱う業務又はそれらのガス、 蒸気若しくは粉じんを発散する場所における業務
  • 砒素化合物(アルシン又は砒化ガリウムに限る。)を取り扱う業務又はそのガス、蒸気若しくは粉じんを発散する場所 における業務
  • フェニル水銀化合物を取り扱う業務又はそのガス、蒸気若しくは粉じんを発散する場所における業務
  • アルキル水銀化合物(アルキル基がメチル基又はエチル基であるものを除く。)を取り扱う業務又はそのガス、蒸気若 しくは粉じんを発散する場所における業務
  • クロルナフタリンを取り扱う業務又はそのガス、蒸気若しくは粉じんを発散する場所における業務
  • 沃素を取り扱う業務又はそのガス、蒸気若しくは粉じんを発散する場所における業務
  • 米杉、ネズコ、リョウブ又はラワンの粉じん等を発散する場所における業務
  • 超音波溶着機を取り扱う業務
  • メチレンジフェニルイソシアネート(M.D.I)を取り扱う業務又はこのガス若しくは蒸気を発散する場所における業務
  • フェザーミル等飼肥料製造工程における業務
  • クロルプロマジン等フェノチアジン系薬剤を取り扱う業務
  • キーパンチャーの業務
  • 都市ガス配管工事業務(一酸化炭素)
  • 地下駐車場における業務(排気ガス)
  • チェーンソー使用による身体に著しい振動を与える業務
  • チェーンソー以外の振動工具(さく岩機、チッピングハンマー、スインググラインダー等)の取り扱いの業務
  • 重量物取扱い作業、介護作業等腰部に著しい負担のかかる作業
  • 金銭登録の業務
  • 引金付工具を取り扱う作業
  • 情報機器作業(旧VDT作業)
  • レーザー機器を取扱う業務又はレーザー光線にさらされるおそれのある業務

参考