2021年6月3日(木)に配信された「岡山さんぽメールマガジン第161号」です。

1.相談員便り

コロナ禍の生活の変化と行動アドバイス(神田秀幸)

新型コロナウイルス感染拡大により、岡山県は2021年5月16日から同31日の間、緊急事態措置の適用地域となりました(2021年5月18日現在)。県民には、日中も含め不要不急の外出や移動の自粛、飲食店などの休業や営業時間の短縮など、感染拡大の防止につとめる生活行動が求められることとなりました。この背景には、重症者数の著しい増加傾向から、県内医療機関の病床数のひっ迫が危機的状況となったことが挙げられます。重症者を増やさないためには、県民の多くが特に我慢の行動を取る2週間となりました。

2020年から続くコロナ禍の中で、多くの市民の方から「飲食や密を避けるため外食や友達との交流も出来ず、ストレスが溜まっています。」という声をよく耳にします。ステイホームで家にいる時間が長くなると、エネルギー発散の場が限られてきます。

そのはけ口として、大人では、アルコールがストレス発散に使われています。コロナ禍にあって、アルコール消費量が増えているという事実をご存知の方も多いことでしょう。習慣的な多量飲酒による健康障害は、アルコール代謝に大きく関わる肝臓だけでなく、血管系や神経系、内分泌代謝など全身の臓器におよびます。国民の中での、飲酒の頻度や量の増加、問題飲酒やアルコール依存症をもつ人が増加しないか、近い未来を心配します。また子どもたちの間では、インターネットやゲームの長時間使用で、心身の健康を損ねてしまわないか、案じるところです。ゲームに没頭することで、日常生活よりゲームを優先したり、家族と喧嘩などの問題が起きてもゲームを続けるなど、ゲームにまつわる問題の増加が容易に想像できます。子どもたちがインターネットやゲームに没頭することで、身体への影響、例えば、視力低下や姿勢の悪化、体格の問題なども出てくるだろうと思われます。“感染症”と、いわゆる“依存症”、平時では一見全く質の異なる病気なのですが、人々の行動からの観点では、実に密接な関係にあります。

こうした心身の健康への影響を予防するため、コロナ禍の過ごし方やストレス発散の提案として、散歩やジョギングなど適度な運動、農作業など屋外で身体を動かすことをオススメします。人出の多い時間帯や密になりやすい場を避けて行うのがポイントです。また、ステイホームで減った活動量に応じ、食事の量や内容に変更してみるのも良いでしょう。また、心の面から、人とのつながりは重要です。感染防止なら、電話やインターネット、SNSなどを使って、関わりをもつことが孤立・孤独の防止になります。また、テレワークが増えた中では、休憩せずに仕事にのめり込んでしまう恐れもあります。オンとオフの切り替えの意識が必要です。

COVID-19流行はまだまだ収束の見込みが立ちません。引き続き、マスク着用、手指消毒といった基本的な衛生行動を継続して頂くとともに、健康的な生活を意識して、日々の生活をどうぞご自愛下さい。

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科公衆衛生学分野担当
岡山産業保健総合支援センター 相談員 神田秀幸

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変異株とは何ぞや?(勝田吉彰)

当コラムの〆切日を提示されつつ、さあどうしようか・・・と思っているうちに岡山に緊急事態宣言が発出されることになりました。いま、岡山を含む全国で新型コロナ感染症の感染者数が増えている背景には、「変異株」があるとメディアが連呼しているのは皆さまご存じのところです。では、今回は「変異株」とは何ぞや、を解説しましょう。

変異株には大きく2つのグループがあります。野球の1軍・2軍に相当します。1軍に相当するのがVOC(Variant of Concern)、「懸念される変異株」とよばれるグループです。2軍に相当するのがVOI(Variant of Interest)、「注目されるべき変異株」です。野球と異なるのは、2軍から1軍への一方通行で、“降格”はありません。本稿執筆の5月15日時点で、WHOが指定しているのはVOCが4種類(いわゆる英国株・ブラジル株・南アフリカ株・インド株とメディアで通称されているもの。筆者はこの通称のしかたにあまり賛成していませんが)、VOIが6種類です。

新型コロナウイルスの遺伝子は1本の長いアミノ酸の鎖から成っていて、ざっくり2週間に1か所変異すると言われています。こうして少年野球チームのように大量の変異株ができるのですが、そのなかで生き残ってプロ(VOC,VOI)になれるのはほんの一握りです。では将来はどうなるかといえば、ウイルスの性格上、今後も新たなプロ級変異株(VOC,VOI)は出現してゆくと考えるのが自然です。

変異のなかには「免疫逃避」、すなわち、従来株への感染やワクチン接種などでいったん出来上がった抗体の働きをすり抜ける作用が指摘されるものもあります。そこから、ワクチンの効果がなくなるのでは?と懸念する声もありますが、必ずしもそうではないようです。いま日本国内で接種がすすむファイザー社製ワクチンでは、New England journal of medicineに報告された報告では、変異株に対し十分な中和抗体(実際に抵抗するのに役立つ抗体)が出来ており、また別の報告でも、2回接種2週間後では英国株に対して89.5%、南アフリカ株に対して75.0%で、重症者、死者の発生抑制率は97.4%と報告されています。

したがって、現時点では、変異株の「感染力の強さ」のところに注目して向かいあうべきでしょう。これは例えて言えば、従来株が少々出来の良くないジグゾーパズルで、ちょっと押し込んで入るのに対し、変異株は上等のジグゾーパズルですっとはまり込むとイメージすればわかりやすいです。だから、体に入れないことがこれまで以上に重要で(体に入らなければ従来株と同じ)、これまで以上に、手洗い・マスク・ソーシャルディスタンス・三密回避・黙食・黙煙といったことを「継続的に」「隙間なく」徹底してゆくことが必要です。

関西福祉大学社会福祉学部大学院社会福祉学研究科教授
岡山産業保健総合支援センター 相談員 勝田吉彰

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2.研修会のご案内

6月に予定している会場での研修会は全て延期(実施未定)または中止といたします。
また、以降の研修会につきましては、受付を継続しますが、延期の可能性があることをご承知おきください。

なお、YouTube配信・Zoom研修会は予定通り実施します。

《YouTubeで視聴する研修会:視聴可能時間が長くなりました!》

●6/3(木)『職域における高齢労働者の健康管理について』
→改正高年齢者雇用安定法が4月より施行されましたので 、高齢労働者の健康管理について分かりやすく解説します。(90分)

●6/28(月)『ここまでわかった新型コロナと夏に向けた対策』
→新型コロナ禍がはじまり1年半が経過したタイミングで、これまでわかった知見、昨シーズン夏の第二波を振り返り夏に備えることなど解説します。(90分)

《Zoomで参加する研修会》

●6/24(木)16:00~17:00
『モジュール構成による新型研修シリーズ3/12』
→(1)業務的健康管理による健康診断、(2)新型コロナBCP、(3)面接シナリオ「勤怠の乱れへの対処」
質問は、チャット機能を用いて、モジュール間のブレイクおよび最後に口頭でまとめて行います。なお、内容は変更となる場合があります。

《延期(実施未定)となった研修会》

●6/1(火)13:30~15:00『若年性認知症について』
●6/4(金)14:00~15:30『自宅や仕事の合間にできる運動いろいろ』
●6/25(金)13:30~15:30『アルコールの健康影響と対策』

《中止となった研修会》

●6/14(月)10:00~11:30『ここまでわかった新型コロナと夏に向けた対策』
→6/28にYouTubeで実施予定です。

●6/17(木)14:00~15:30『職域における働き方改革法とワークライフバランス及び業務改善の実際について』
→7/1にYouTubeで実施予定です。

●6/22(火)14:00~15:30
『ストレスチェック制度の概略と流れ(新任者向け)』
→7/6にYouTubeで実施予定です。

◆参加申し込みはこちら

次回の第162号は2021年7月初旬に配信予定です。