2022年5月2日(月)に配信された「岡山さんぽメールマガジン第172号」です。
1.相談員便り
安心⇔不安(内田晃裕相談員)
春は出会いや別れ、新しい環境や初めての人間関係など変化に富んだ季節です。いつもと違う目新しいものが刺激となって、特別なことをしなくても気持ちが動いてしまうのではないでしょうか。新しい環境を目の前にした時、「この先どんなことが待っているんだろう!」とワクワクする人もいれば、「これから何が起こるんだろう…」と不安を抱く人もいるでしょう。全く同じ環境(例えば、入社式や異動など)におかれても、全員が同じ気持ちでその場にいるとは限りません。ポジティブであったり、ネガティブな気持ちであったり、はたまた別の気持ちでいたりと。
人はある出来事に直面した時、その瞬間にふと考えがよぎり、感情が湧いてきます。多くの場合、ポジティブなもの、ネガティブな感情に大別でき、両方が混ざり合っていることもあるでしょう。ここで気を付けたいのはポジティブだから良い、ネガティブだから悪いというわけではないということです。例えば、非常に前向きにチャレンジをしたけどミスしてしまった・・・とても不安で恐る恐る取り組んでみたら、トップの成績が出せた・・・などポジティブやネガティブな感情自体の評価が何かを左右するというわけではないということに気づいてもらえたのではないかと思います。
前置きが長くなってしまいましたが、このような新生活がはじまるタイミングは、色々な“出会い”があります。そんな時、“食べず嫌い”をしないことがとても重要です。そう、食べず嫌い…「あ~めんどくさい」「はい無理~」「したことないし」と何もしないまま(食べないまま)、回避すると、新しい経験をする機会(新しい味や触感を味わう)を逸してしまいます。これってもったいないことをしていると思いませんか。読者の方で、新しい生活や環境に身を投じている方がいらっしゃいましたら、それは、何かの世界観を得る機会です。今までにないことを知れる(味わう)機会を逸しないよう、身の回りをキョロキョロとアンテナを張って見まわしてみてください。経験を積めば積むほど、さまざまな場面を目の前にしても、不安と緊張は徐々に安心に変わっていくでしょう。
2021年ノーベル生理学医学賞(山下龍子相談員)
今日のお話は、昨年の「ノーベル生理学医学賞について」といういささかいかめしい題なのですが、事の始まりは、昨年10月中旬に庭でバーべキュウをしていた時のことです。7歳の孫が誤って肉に唐辛子入りのたれをつけてしまったのです。彼は、「辛い、辛い。でもどんどん熱くなるよ。ばあちゃんどうしてなの?」と言うのです。私は1週間前にノーベル賞が、「温度・触覚の受容体の発見」であるとの新聞記事を読んでいたので、驚いて、「その答えは今年のノーベル賞にあるよ。」と伝えました。そこで、バーべキュウもそこそこに2人で答えを探すことにしました。「何かわかり易い図はないかな?」と言うと、「ママに買ってもらった」という「体の不思議」という図監をだしてきたのです。その図を見ながら、文献を取り寄せて調べてみました。
2021年のノーベル生理学医学賞は、米カリフォルニア大学のデービッド・ジュリアス氏と米スクリプス研究所のアーデム・パタプティアン氏の2名が授与されました。
人間は様々な感覚を通じて自分の周囲にある環境を把握しており、体には目や耳などのセンサーが備わっています。しかし、物体の温度や肌触り、自分の体の姿勢、さらには痛みといった感覚は一体どんなセンサーでとらえているのか。それは「受容体」と呼ばれ、「何かを受け取るもの」です。私たちの体には様々な受容体があり、それは細胞のなかにあり、外界からの刺激を受け取り感覚として利用しています。
ジュリアス氏は1997年に温度受容体を発見しました。それまで彼は唐辛子の刺激に反応するカプサイシン受容体を探していました。
ある日のミーティングで、「唐辛子を食べると熱く感じる。カプサイシン受容体は熱にも反応するのでは?」と話し、実験してみるとこの受容体はカプサイシンがなくても43度以上の熱で反応したのです。カプサイシンの化学的な刺激と熱刺激の双方を受容するこの受容体は1997年に報告されました。
その後は類似の温度受容体は11種類見つかっています。その中には28度未満で反応する受容体があり、清涼感を感じるミントの成分やメントールにも反応します。ニンニクやワサビ、シナモンの成分に反応する受容体も見つかっています。和食に用いられるワサビは熱受容体を活性化するのではなく、反対に冷受容体を活性化します。つまりワサビの辛さは冷た過ぎてひりひりする感覚なのです。
ここまで孫と一緒に調べて、彼の驚きとジュリアス先生の気づきが同様であることがわかりました。「これからも、不思議だと思うことがあったら教えてね?」と孫に言うと、「今、考えているのは、ライオンとティラノザウルスが戦ったら、どちらが強いか?なのよ。」と言います。これにはどう答えたらよいのか分かりません。
2.研修会のご案内
【Zoom】
★マークがついたものは、後日見逃し配信(YouTube配信)を予定しています。当日に都合が悪い場合でも、Zoom研修会にお申し込みください。
●5/23(月)10:00~11:30『新型コロナでわかったことと、これから』★
→新型コロナウイルス感染症の世界の状況や知見で、研修時点の最新動向と今後の見通しを解説します。
●6/6(月)13:00~14:30『「聞き方」のコツ トレーニング1』
→悩み・ストレスによる体調変化などを来した従業員に対する話の聞き方をロールプレイを通して学習していきましょう。グループワークを行います。
●6/21(火)14:00~15:00『ストレスチェック制度の概要と最近の動きについて』★
→ストレスチェック制度がスタートして6年が経過しましたが、岡山産業保健総合支援センターには、未だに多くの相談が寄せられています。この研修会では、相談のあった内容を含めストレスチェック制度について解説します。また、これからストレスチェック制度を導入しようとする小規模事業場の方にもわかりやすく解説します。
●6/27(月)13:30~15:00『リスクアセスメント、化学物質のリスクアセスメントについておさらい』★
→危険予知活動の重要性、ラベルでアクシヨン(化学物質のリスクアセスメント)などもう一度復習してみましょう。
【YouTube配信+Zoom(質疑応答とグループワーク)】
約1週間前から講義動画をYouTubeにて配信します。グループワークの参加を希望されない方は、質疑応答の後、Zoomから退出してください。
●5/19(木)15:30~17:00『健康診断事後措置』、他
●6/30(木)15:30~17:00『過重労働対策』、他
→タイトルのテーマについて、「基礎理論編」「基礎実践編」および「FAQ(よくある質問と回答)」の3モジュール(1モジュール15分目安)で構成されます。
【YouTube配信】
期間内であれば何度でも視聴できます。
●5/27(金)13:30~5/31(火)16:30『保健指導に大切な8つの軸』(90分)※対象:産業看護職
→保健師にとって保健指導は重要な業務です。保健指導に大切な8つの軸について一緒に考えていきましょう。
●6/10(金)13:30~6/14(火)16:30『働き方改革とワーク・ライフ・バランスおよび業務改善の実際、および健康経営優良法人(ホワイト500・ブライト500)について』(90分)
→働き方改革で、労働時間の適正化や有給休暇取得率の向上などで従業員のワーク・ライフ・バランスが改善されると離職率が低下。さらに健康経営優良法人認定によって企業イメージが向上すれば、優秀な人材が集まり、社会的評価の獲得へとつながります。これらのことを分かりやすく説明します。
●6/29(水)13:30~7/1(金)16:30『熱中症予防』(90分)
→熱中症は最悪死亡することがありますが、予防が可能です。熱中症の予防について考えましょう。
【会場に集まる研修会】
ピュアリティまきび(岡山市北区下石井2-6-41)で開催します。
●6/7(火)13:30~15:00『メンタルヘルスに関する病気について』
→過剰なストレス刺激は、精神的な病的状態の原因となります。ストレスが起因となる病気を紹介します。また、COVID-19に伴うメンタルヘルスの問題を紹介します。
●6/16(木)15:00~16:30『職場のメンタルヘルス対策体調不良者の早期発見のポイント』
→メンタルヘルス不調者の対応は難しいといわれることが多いです。対応が難しくなる理由を明確にし、早期発見のポイントを理解します。昨年度と同じ内容です。グループワークを行います。
3.産業医研修会(2022年6月)
日時:6月9日(木)14:30~16:30
会場:岡山県医師会館三木記念ホール
演題1:ルールにもとづくメンタルヘルス対策総論
演題2:メンタルヘルス対策(手順と様式)
講師:高尾総司(岡山大学大学院疫学・衛生学分野 准教授)
単位数:生涯専門2単位
受講料:無料
お申込みはこちら:https://okayamas.johas.go.jp/2022-0609/
次回の第173号は2022年6月初旬に配信予定です。