1.相談員便り

岡山開催!2023年度アルコール・薬物依存関連学会合同学術総会のご案内(神田秀幸相談員)

本年10月13-15日岡山コンベンションセンターにて2023年度アルコール・薬物依存関連学会合同学術総会が開催されます。この合同学会は、日本アルコール・アディクション医学会と日本アルコール関連問題学会の2学会で共同開催するものです。大会長は、日本アルコール・アディクション医学会側は私神田が、日本アルコール関連問題学会は慈圭病院理事長堀井茂男先生が務めます。

本総会の合同テーマを「依存症・アディクションに向き合う未来-コロナ禍を超えて-」と致しました。新型コロナウイルス感染症の世界規模の流行、いわゆるコロナ禍によって、私たちの生活や価値観は大きく変化しました。依存症やアディクションの問題も、コロナ禍により表出してきた面もありました。ステイホームによる外出自粛により、家庭内の時間が増え、たばこやアルコールなど身近な依存性物質、ギャンブルやゲームなど嗜癖行動に孤独感解消を求めるような動きがみられました。しかしおよそ3年の時を経て、人類はようやくコロナ禍のトンネルから抜け出したところです。コロナ禍を超越した時代を皆さんとともに、新しく描いていきたいという思いを込めて学会を運営致します。また、心の時代ともいわれる21世紀において、依存症・アディクションは新しい局面を迎えています。依存症・アディクションに向き合う未来を語り、希望ある学術総会にしていきたいという思いを、大会テーマに込めています。

本総会は、わが国で唯一依存症・アディクションに取り組む第一線の専門家が一同に会する学術交流の場です。先端科学による学術研究や保健医療福祉の場面での取組み・実践のみならず、従来の学問分野にとらわれない、多様な学問領域からのアプローチを知ることのできる機会ともなっています。これまでも、日本アルコール・アディクション医学会と日本アルコール関連問題学会はそれぞれの特徴から生まれる多彩なテーマに対して互いに協力してきました。これをさらに発展・強化し、岡山の地から、新しい時代の依存症・アディクションのあり方を発信し、今後の当該分野の研究の発展に、またアルコール・アディクション問題の解決の一助となる場であるよう鋭意準備しております。

なお日本医師会認定産業医研修は、10月14日土曜15:30から産業医研修1「タバコ根台・ニコチン依存症について議論する-最新の研究紹介-」と題して更新2単位、および同15日日曜10:10から産業医研修2「産業保健の飲酒問題に対する効果的な予防と治療について考える-産業保健と医療はどのように協働すべきか?-」更新2単位、合計4単位を予定しております。学会参加登録のみで単位取得が可能ですので、是非ご参加頂ければ幸いです。

岡山県内の開催でございますので、皆様方のふるってのご参加を心よりお待ち申し上げております。

第58回日本アルコール・アディクション医学会学術総会
https://kwcs.jp/alcohol2023/

《神田相談員の研修会》
https://okayamas.johas.go.jp/tag/kanda_hideyuki/

人類の“進化”と生活習慣病(中村武博相談員)

製品が改良された際には“進化した○○”といったキャッチフレーズがよく使われ、進化は一般的に良いイメージが持たれています。しかし、進化とは遺伝子の突然変異による遺伝的多様性の中から、環境に最も適応できた特性を持つ個体が生き残ることで、生物種全体が変化していくプロセスです。そのため、古代には生存に有利だった遺伝的特性が、現代の環境では不利に働くこともあるのです。

以下では、そのような進化が現代人にとって不利となっている例を紹介します。

飲酒について

およそ1200万年前、地球は大規模な気候変動により乾燥し、食料となる果実が激減していたとされています。その頃の類人猿は地面に落ちて自然発酵した果実を食べることはできませんでした。しかし、アルコールを分解する能力を偶然に獲得した人類の祖先は、栄養を得ることで生き延び、数を増やしていきました(NHKスペシャル「飲みたくなるのは“進化の宿命” 酒の知られざる真実」より)。

一方、現代社会では食糧が十分にあるため、アルコールを摂取することが生存に有利になることはありません。それどころか、過度なアルコール摂取で寿命を縮める人さえいる状況です。ちなみに、アルコールを分解できない人は進化できなかった訳ではありません。むしろ最近の研究で、「飲めない体質」への進化が起きたという報告もあります(”Deep whole-genome sequencing reveals recent selection signatures linked to evolution and disease risk of Japanese” Nature Communications volume 9, Article number: 1631)。

肥満について

人間の“進化”と環境変化は、肥満についても影響しています。狩猟・採集生活をしていた時代には、食糧(獲物や果実など)を見つけた時にできるだけ多く食べ、エネルギーを脂肪として蓄えて飢饉に備えることが生存に有利でした。しかし現代の飽食の時代では、この特性が肥満による健康問題を引き起こす要因となりました。

保健指導をしている際、「なぜ節酒しないのだろう」や「もう少し本気で減量してほしい」と思うことがあります。しかし、そのような時はこの話を思い出し、「遺伝子に刻まれているので、そう簡単には変われないのだ」と自分自身に言い聞かせ、粘り強く指導するようにしています。

《中村相談員の研修会》
https://okayamas.johas.go.jp/tag/nakamura_takehiro/

2.研修会のご案内

研修会についてはこちら
https://okayamas.johas.go.jp/training/

3.産業医研修会

産業医研修会についてはこちら
https://okayamas.johas.go.jp/tag/ss,sj,sk/

4.『産業保健21』第114号が発行されました

特集:外国人労働者に対応する産業保健

・疲労の蓄積とその対応
・おさえておきたい基本判例(性同一障害である職員のトイレ使用制限等を肯定した人事院判定を適法とした高裁判決を覆した事案)
・糖尿病患者の就労支援~現状と課題~
など

ダウンロードはこちら(無料)
https://okayamas.johas.go.jp/21-114/

情報誌『産業保健21』は、産業医をはじめ、保健師・看護師、労務担当者等の労働者の健康確保に携わっている皆様方に、産業保健情報を提供することを目的として、独立行政法人 労働者健康安全機構が発行しています。

5.高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのご案内~「難病のある人の雇用管理マニュアル」~

高齢・障害・求職者雇用支援機構においては、難病のある人の治療と仕事の両立支援を図るために、「難病のある人の雇用管理マニュアル」を作成しており、ホームページからダウンロードできますので、御活用ください。

https://www.nivr.jeed.go.jp/research/kyouzai/kyouzai56.html


次回の第190号は2023年11月初旬に配信予定です。