2026年7月
熱中症のおそれがある労働者を早期に見つけ、その状況に応じ、迅速かつ適切に対処することにより、熱中症の重篤化を防止するため、令和7年4月に労働安全衛生規則が改正されました。
そして、令和8年3月に「職場における熱中症防止のためのガイドライン」(以下、「ガイドライン」とします。)が策定されました。
ガイドラインの目的は、労働安全衛生関係法令と相まって、職場における熱中症防止のための労働衛生管理体制の確立・作業環境管理・作業管理・健康管理・労働衛生教育等の熱中症リスクに応じて行うことが望ましい具体的方法を一体的に示し、事業者がその業種・業態に応じて適切に選択して取り組むよう促すことにより、職場における熱中症による労働災害等の防止を図ることを目的としています。
ガイドラインでは、職場における熱中症による労働災害等の防止を図るため、次の「第1 熱中症のリスクの評価」により、熱中症によるリスクを把握・評価した上で、その結果に基づき実施することが適切な対策を、次の「第2 熱中症リスクに応じた措置」の措置から選択して実施することとされています。
- 職場における熱中症防止のためのガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001676141.pdf - パンフレット「~職場における~熱中症予防基本対策のススメ」
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001485695.pdf - パンフレット「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」
https://neccyusho.mhlw.go.jp/download/assets/pdf/guide_pdf_all.pdf
第1 熱中症のリスクの評価
有害性の要因の特定
まず、事業場において、熱中症リスクとなり得る暑熱に関する要因があるかを特定します。
暑熱に関する要因
- 高温・多湿な作業環境
- 連続作業
- 通気性や透湿性の低い衣服や保護具
- 身体作業負荷の大きい作業
湿球黒球温度の値(WBGT値)の把握
暑熱環境による熱ストレスの評価を行う暑さ指数であるWBGT値をJIS B 7922 に適合したWBGT 指数計により随時把握します。
熱中症リスクの評価・検討
把握した実測WBGT値に対し、着衣補正を行い、着衣補正値を加えたWBGT値を、身体作業強度及び暑熱順化の状況に応じたWBGT基準値に照らして、熱中症リスクを見積ります。
着衣補正値を加えたWBG値が、WBGT基準値を超えている又は超えるおそれのある場合には、熱中症リスクの低減のための措置の検討を行います。
第2 熱中症リスクに応じた措置
労働衛生管理体制の確立等
事業場における熱中症防止対策については、衛生委員会、安全衛生委員会又はこれらを設けていない事業場における労働者の意見を聴く機会等を活用し、労働者の理解と協力を得つつ労使で話し合い、その内容を労働者に対して周知することが重要です。
各種管理者等の選任と役割
また、事業者は、産業医の意見も参考にしながら、衛生管理者(50人未満の事業場では安全衛生推進者又は衛生推進者)を中心に、熱中症防止対策について検討させ、ガイドラインに示された業務を行わせることとされています。
なお、衛生管理者、安全衛生推進者等以外の者に熱中症予防対策を行わせる場合は、熱中症予防管理者労働衛生教育を受けた者等熱中症について必要な知識を有する者のうちから、熱中症予防管理者を選任することとされています。
作業手順・作業計画の策定
暑熱順化プログラム、WBGT値に応じた十分な休憩時間の確保、WBGT基準値を踏まえた作業中止に関する事項を含めた、夏季の暑熱環境下における作業に対する作業手順・作業計画を策定することとされています。
報告体制の整備及び手順等の作成並びに周知
熱中症を生ずるおそれのある作業を行わせるときは、当該作業に従事する者が熱中症の自覚症状がある場合や、当該作業に従事する者に熱中症が生じた疑いがあることを当該作業に従事する他の者が発見した場合にその旨を報告させるための体制を整備し、関係者に周知しなければなりません。(安衛則第612条の2第1項)
また、事業者は、熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、作業場ごとに、当該作業からの離脱、身体冷却、必要に応じての医師の診察又は処置を受けさせることその他熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置の内容及びその実施に関する手順や緊急連絡先を定め、当該作業に従事する者に対し、当該措置の内容及びその手順等を周知しなければなりません。(安衛則第612条の2第2項)
作業環境管理
WBGT値の低減
事業者は、過去に熱中症による労働災害が発生した場所など、WBGT基準値を超えている又は超えるおそれのある場所において作業を行うことが予定されている場合には、WBGT値低減対策を講ずること等により、WBGT値の低減に努めることとされています。
休憩場所の整備等
熱中症の重篤化を防ぐためには、適切な身体冷却が有効であるため、作業場所の近くに冷房を備えた休憩場所又は日陰等の涼しい休憩場所を確保することとされています。
作業管理
作業手順・作業計画に基づき、熱中症予防対策を作業の状況等に応じて実施するよう努めることとされています。
作業時間の短縮等
「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」
暑熱順化
「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」
プレクーリング
水分及び塩分の摂取
多量の発汗を伴う作業場では、塩及び飲料水を備え付けることが義務付けられており、当該作業場では、飲料水、スポーツドリンク、経口補水液、塩飴等を備え付けなければなりません。(安衛則第617条)
「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」
服装による身体冷却

作業中の巡視

業種・作業別の対応例
健康管理
熱中症の発症者については、当日又は前日に、睡眠不足、食欲低下、下痢や感冒様症状、全身倦怠感などの比較的軽微な体調変化が先行し、それが暑熱ばく露と重なることで急激に重症化する例が多いため、事業者による健康診断結果に基づく対応のみならず、作業開始前に、当日の体調に普段と異なる点がないか等を確認することや、作業従事者自身の日常の健康管理が重要です。
- 健康診断結果に基づく対応
- 日常の健康管理等
- 作業従事者の健康状態及び暑熱順化の状況等の確認
労働衛生教育
熱中症対策を的確に行うためには、対策に関わる熱中症予防管理者、職長等現場で作業従事者を指揮する者及び作業従事者に対し、所定の事項、範囲及び時間により、熱中症に係る労働衛生教育を行うことが望ましいとされています。
- 熱中症予防管理者労働衛生教育
- 職長等現場で作業従事者を指揮する者向け教育
- 作業従事者向け教育
異常時の措置
熱中症から命を守る「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」(pp.4-12)
熱中症を疑わせる症状が現れた場合、周囲の作業従事者等は、熱中症が疑われる作業従事者を、必ず、一旦、作業から離し、救急処置として涼しい場所で身体を冷やし、水分及び塩分の摂取等を行わせることとされています。
その他
ガイドラインの実施事項については、おおむね4月中までに、円滑かつ継続的に実施できるよう準備することが望ましいとされ、いわゆる「スポットワーク」を利用する労働者については、法令や本ガイドラインに基づく措置を講じることや、注文者や作業場所管理事業者による配慮が示されています。
参考情報
「職場における熱中症防止のためのガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001676141.pdf
パンフレット「~職場における~熱中症予防基本対策のススメ」
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001485695.pdf
パンフレット「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」
https://neccyusho.mhlw.go.jp/download/assets/pdf/guide_pdf_all.pdf











