2021年9月3日(金)に配信された「岡山さんぽメールマガジン第164号」です。

1.相談員便り

職場における「心理的安全性」について(谷原弘之)

初めて掲載させていただく、川崎医療福祉大学臨床心理学科の谷原弘之です。職種は、公認心理師・臨床心理士で、心理学の視点から職場のメンタルヘルスの相談を担当しています。

新型コロナ禍の職場において大切なものは何かを考えてみました。そのひとつに「心理的安全性」というものがあります。心理的安全性とは、「不安やおそれを感じることなく、発言や質問ができる環境や関係性」のことです。この概念は、心理学の中の組織行動学の一つとされています。

近年では、2016年2月にGoogleが、TheNewYorkTimesに「心理的安全性は成功するチームの構築に最も重要なものである」という労働改革プロジェクト「プロジェクト・アリストテレス(ProjectAristotele)」を発表しました1)。これは、Googleの中に数百あるチームの中で、生産性の良いチームと悪いチームを分析した結果、仮説として「優れたチームは仕事以外のプライベートでも一緒に遊びに行く等、親しい関係性をもっているのではないか」と考えましたが、それは結果として支持されませんでした。逆に、チームの成功因子として見いだされたものは、「心理的安全性」でした。その中でも、生産性の高いチームには2つの共通点があったそうです。1つは「均等な発言機会」で、生産性の高いチームはみんなが自分の考えを発言できる機会を設けていました。一方、生産性の低いチームは、一部の人が発言機会を独占し、一方的な発言を行っていたそうです。2つめは「社会的感受性の平均値の高さ」でした。社会的感受性とは自分の発言が相手にどのような影響を及ぼすのかを理解し、相手の表情や言動から本当に伝えたい思いを読み取ることができる能力で、共感力ともいえるものです1)。この結果から、誰もが職場で萎縮することなく発言できる機会を保障し、それを周囲がうまく共感してくれた場合に「心理的安全性」が働くようです。

新型コロナ禍の職場においては、誰もが疲弊しています。この状況下においては、リーダーが感染予防に対してはリーダーシップを発揮し、それ以外の場面では「みなさんも疲れていると思いますが、自分だけでやれることは限界があるので、気づいたことは言葉にしてもらい、みんなで困難を乗り切りましょう」と依頼することで、風通しのよい発言の場が保障されたと感じ、心理的安全性が高まっていくと考えます。新型コロナ禍の今だからこそ、相互支援の職場風土づくりのチャンスだと考えます。

引用文献
1)Charles Duhigg, What Google Learned From Its Quest toBuild the Perfect Team, The New York Times, Feb. 25, 2016.

《谷原相談員の研修会》

あなたの生きがいや趣味は何か?と聞かれたら(福岡悦子)

1.パッチワークで小物づくり 
2.木目込み人形づくり(干支、フクロウ、市松人形など)
3.野菜づくり(亡き母が作っていた約100坪)
と答えるでしょう。

令和3年3月31日、任期満了により山陽学園大学看護学部を退職した。産業保健師として働いていた若いころ、社員の方が定年退職したら何か趣味を始めたいとの声をよく聞いていた。中には趣味と実益を兼ねて物づくりをしていた社員もいた。

退職後のことを考えて始めたわけではないが、パッチワークでの小物づくり(約40年前)、野菜づくり(約30年前)、木目込み人形(1998年寅年、約25年前)と出合った。

1.パッチワーク:今は亡き高校時代の友人がプレゼントして下さったポシェットが大変気に入り、現物から製図してパッチワークのポシェットづくりに挑戦した。頂いた品はすり切れてしまったが大切に保管している。表地はミシンを使用して2センチ幅のいろいろな模様の布を縫い合わせ(ただし半部は無地布を使用)、裏布との間に芯を入れて、ミシンの縫い目の部分に一針ずつステッチをかける。その後縫い合わせ、縁取りの後ファスナーをつけて完成となる。大きさは横21.5、縦16センチである。これまでに作ったポシェットは100個以上になると思う。何かのお礼などで差し上げている。今もステッチを待っている未完成品が50個くらいある。退職後の退屈しのぎになると思われる。他にUSB入れ、ポケットティッシュ入れなども随時作成している。

2.木目込み人形:産業保健師のころ、当時の事務長の奥様が木目込み人形づくりの先生をしておられた。人形づくりを勧められて数年後、お世話になった方が口腔保健の関係で開業されたお祝いに1998年干支(寅)を作成した。その後毎年お歳暮に5個ずつ干支を作成し一回りが過ぎ、干支づくりも3周目に入った。その間フクロウづくりも始まり、奥井幸子先生(当時、岡山県立大学教授)のご縁で2003年6月フィンランド旅行時には海外にも5組持参した。

また、1999年8月に岡山で開催された産業看護国際学会では、フィリピン、韓国、タイランド、奥井先生、通訳の先生のために5組、10体の木目込みの「市松人形」を贈ろうと2月ころから作成にかかった。ところが3組完成した6月ころから右親指がばね指になり、痛みであとの2組が作成できなくなり、木目込み人形の先生に作成を依頼した経緯がある。先生は布が人形に美しく入るように、常に深い切り込みを入れるよう指示された。また着物の袖口には一枚の布を入れるのではなく、人形の袖の部分を深く切り込み、本当に着物を着ているように長襦袢まで布を入れていた。また、帯の部分でも一直線ではなく帯が着物の上にくるように着せていた。手間はかかるがとても美しい人形となる。

本年3月、二人の孫娘の初節句に内裏雛(だいりびな)を作成、プレゼントし自己満足した。

3.野菜づくり:子供のころ祖母とともに畑に行くことが多かったので、畑で畝を作ることは得意であった。約30年前、母が耕作していた約100坪の荒れ放題の畑(土筆が生えていた)を受け継いだことが契機であった。土筆とは早春に出るスギナの胞子茎(デジタル大辞泉)である。30センチくらいの深さまで掘り、スギナの茎を抜いていくため開墾に時間がかかったが、土づくりの結果、現在では夏野菜、冬野菜がすくすくと育つようになってきた。

スイカづくりについて紹介する。20数年前スイカが一晩の大雨で全滅したことがあった。その後、スイカを植える場所は地面を30センチほど高く盛り上げて植えるようにしたので、雨のため全滅とはならなくなった。さらにカラス対策として地面から約50センチのところに網を張っていた。本年はいつものように網を張っていたので前半はカラスの害には合わなかった。しかし先日来の雨天続きで8月21日夕方、畑に行くと多くのスイカのつると葉が枯れており、スイカが上から丸見え状態になっており、10数個のスイカが無残にカラスにつつかれて全滅していた。残念であった。

《福岡相談員の研修会》

2.研修会のご案内

緊急事態宣言発令期間中に会場で行う研修会は、オンラインでの開催に切り替えて実施します。また、宣言発令期間以降の研修会につきましては、受付を継続しますが、延期の可能性がありますのでご承知おきください。

なお、YouTube配信・Zoom研修会は予定どおり実施します。

《中止になった研修会》

●9/10(金)14:00~15:30
『発達障害労働者の行動特性に準じた対応について』
→近年は、大人の発達障害かも(?)と思う事例が増えてきました。そんな特性を持った方への職場適応支援は、周囲の努力だけはうまくいかないことが多いです。今回は、特性を持たれた方への対応のコツを紹介します。研修終了後、岡山障害者職業センターからリワーク支援(復職プログラム)についての説明があります。(10分程度)※9/28(火)のYouTube版は予定通り開催します。

《ピュアリティまきびで開催する研修会》

●9/30(木)14:00~15:30
『治療と仕事の両立支援への社会的取組
~雇用管理の課題と地域福祉支援の活用~』
→待ったなしの「同一労働・同一賃金」の最新情報も含め、生産性と働きやすい職場環境について、また誤り易い雇用管理や健康診断の取扱いについてお伝えします。
「改正高年齢者雇用安定法」における社会貢献事業への取組等、従業員とその家族に目を向けた地域福祉支援の取組についてもお伝えします。

《YouTubeで視聴する研修会》

●9/15(水)
『初めてでもわかる健康診断(基礎知識と事後措置)』
→労働衛生管理において健康診断を実施し事後措置を講ずることは、事業者が安全配慮義務を果たす上でもきわめて重要です。定期健康診断に関する基礎知識に関して初めての方でもわかるように解説します。また健康診断項目の「血圧測定」に関しては、その管理が特に重要であると考えられるため少し詳しくお話しします。※8/27と同内容(90分)

●9/22(水)
『保健指導の基本(心に響く保健指導)※対象:産業看護職』
→保健指導は一歩的に伝えて終わりではありません。相談者の行動変容が変わるには相手の心に響くことが重要です。一緒に考ましょう。(90分)

●9/24(金) ☆NEW☆
『コロナ禍におけるストレス対策について』
→ストレスを溜めない受け止め方とは?ストレス対処法とは?セルフケアとは?何かヒントになるお話が出来ればいいと思います。※8/25と同内容(90分)

●9/27(月) ☆NEW☆
『高年齢労働者の転倒災害防止対策としての運動 機能チェック』
→少子化の中、確実に勤労者数は減少し、定年延長とともに高年齢労働者が増えています。その中で、労働災害(主に転倒)を減らして生産性を維持・向上させるためには、個々の身体機能維持・向上が望まれます。まずは自身で簡単な運動機能チェックをしてみませんか? 今回は運動機能チェック方法を動画を通じて紹介します。(90分)

●9/28(火)
『発達障害労働者の行動特性に準じた対応について』
→近年は、大人の発達障害かも(?)と思う事例が増えてきました。そんな特性を持った方への職場適応支援は、周囲の努力だけはうまくいかないことが多いです。今回は、特性を持たれた方への対応のコツを紹介します。(90分)

《Zoomで参加する研修会》

●9/16(木)16:15~17:00
『モジュール構成による新型研修シリーズ6/12』
→(1)WEB面談考察
(2)面接シナリオ「療養開始説明」
(3)希望テーマ(受付中)
研修日1週間前から講義の動画をYouTubeにて配信しますので、ご視聴ください。研修会当日、16:15~17:00にZoomミーティン
グにて質疑応答を行います(動画未視聴の方向けに15:30~16:15にZoomにて動画を公開します)。

《Ciscoで参加する研修会》

●9/9(木)14:00~16:00
『オンラインライブ キャリアコンサルタント視点からみた『がん治療と就労の両立支援』
→「がんなのですが、今後、仕事をどうしたらよいでしょうか?」と突然、労働者から相談を受けたら、あなたはどうしますか?相談場面等で役立つ心がけと対応方法、特に、(1)傾聴のコツ、(2)キャリアの知識を学びます。

◆参加申し込みはこちら

3.道路貨物運送業労務管理・安全衛生管理等オンライン説明会

現在、トラック等自動車の運転の業務については、改正労働基準法に基づく時間外労働の上限規制の適用が猶予されていますが、令和6年4月からは新たな規制が適用となり、各道路貨物運送事業者におかれましてはその対応準備が必要となります。

また、道路貨物運送業における労働災害は、依然としてトラック荷台からの墜落・転落災害を中心に多発している状況です。そのため、岡山労働局及び各労働基準監督署では、オンライン説明会を開催することといたしました。説明会では、労働時間の関係法制、労働災害の防止対策、健康の確保対策等についてご説明いたしますので、是非ともご参加いただきますよう、ご案内いたします。

参加申し込みはこちら

4.産業医研修会(10/14、10/23)

2021年10月に産業医研修会を2件開催予定です。会場は、いずれも岡山県医師会の三木記念ホールです。

●10月14日(木)14:30~16:30
※申込開始は9月6日(月)です

『がん患者の両立支援~医療機関と産業医の役割~』
『治療と仕事の両立支援について』
講師:石崎雅浩(岡山ろうさい病院消化器病センター長)、坂井淳恵(岡山ろうさい病院がん看護専門看護師)、成川彰浩(特定社会保険労務士)
単位 :生涯研修(専門2単位)
内容:労働者が、がん等の疾病を抱えながら仕事を継続するためには、医療機関・企業・産業医の連携が不可欠です。働き方改革の実行計画にも盛り込まれている、治療と仕事の両立支援について産業医研修会を開催します。

●10月23日(土)14:30~16:30
※申込開始は9月21日(火)です

『職場巡視の目のつけどころ』
講師:神田秀幸(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科公衆衛生学 教授)
単位:生涯研修(実地2単位)
内容:職場巡視の際、産業医はどこを見て指摘したら良いか、悩むといった声を聞きます。産業保健実践の知識の整理と具体的な取組み事例を検討し、職場巡視の目のつけどころを解説していきます。写真や事例をもとに双方向型の「実地」研修として実施します。

申込はこちら※申込開始日になると、申込ページが表示されます。
https://okayamas.johas.go.jp/category/industrial-physician/

5.「勤労者医療フォーラム」のご案内

「両立支援推進のために-今からできること-」をテーマにがんの治療と就労の両立支援フォーラムが、開催されます。参加費は無料で、新型コロナ対策のためライブ配信で開催いたします。皆様のご参加をお待ちしております。

日時:令和3年9月23日(木)(祝)13時00分~16時30分
主催:独立行政法人労働者健康安全機構

詳細と申込はこちらから
https://www.tokyor.johas.go.jp

次回の第165号は2021年10月初旬に配信予定です。