2022年12月1日(木)に配信された「岡山さんぽメールマガジン第179号」です。
1.相談員便り
産業保健師時代のお仕事(福岡悦子相談員)
私はNTTで産業保健師として29年間お世話になりました。入社時は日本電信電話公社といって、三公社五現業の時代で、全国で36万人の社員がいました。NTTでいろいろなことを経験したことが大学教員となり、産業保健を担当するというその後の人生につながっています。入社当時保健師6人、看護師2人で岡山県内の企業では最も看護職の多い職場でした。上司に恵まれ、他の企業では実施していなかった特別の業務をいろいろと行うことができました。(1)禁煙マラソン、(2)機関紙“べっぴんだより”、(3)健康通知表(退職時に退職者全員に退職辞令とともに配付)(4)口腔保健などです。今回は(1)禁煙マラソンについて紹介させていただきます。
平成8年2月21日、勤務を終えて帰宅途中の車のラジオからニュースが飛び込んできました。それは、平成8年2月21日付基発第75号「職場における喫煙対策のためのガイドライン」でした。当時は喫煙権が主張されていることもあり、労働省としては職場内おいて喫煙者と非喫煙者が喧嘩をしないようにという意味が込められていたように感じました。保健室では毎朝ミーティングをしており、前日のニュースを皆さんに紹介し、今後は喫煙対策が必要だと考えました。直ちに後輩の保健師に当時の岡山労働基準局に出向いてもらい、労働省から届いたガイドラインの説明をいただきに行きました。岡山労働基準局では昨日本省からファックスが届いたばかりで、冊子にもなっていませんがと言われながらコピーをくださいました。すぐに岡山県内の元締めである岡山支店の労務厚生課にファックスのコピーを持参して相談(根回し)に行き、次年度会社として喫煙対策に取り組むことを提案し、安全衛生委員会での承認を得ました。当時禁煙外来を実施して禁煙成功者を数人出していた内科部長(産業医)と詳細に相談し方針を決定していきました。毎年実施している健康診断時の問診で喫煙者が禁煙を希望している割合もつかんでいました。1995(平成7)年対象者2291人中、いつも禁煙を希望する社員(14%)、時々禁煙したいと希望する社員(52%)も後押ししてくれました。禁煙期間はマラソンになぞらえて42日間としました。
以下のスライドで紹介いたします。
まとめとして、
【1】事業所とタイアップし、教室・禁煙マラソン等健康教室に取り組んだ。
【2】禁煙マラソン完走者は、平成9年度は30人(23.3%)、平成10年度は20人(27.4%)であった。
【3】1年後の禁煙継続率は、平成9年度は7人(参加者比5.4%)、平成10年度は5人(参加者比6.8%)であった。
【4】禁煙を幅広くとらえ、”禁煙”に固執せず、努力や過程も評価した。
【5】効果的な手法を求め、グループ学習、呼気中一酸化炭素濃度測定、禁煙タイプ別チェック、電話支援等を実施した。
【6】これからも、より多くの社員へ禁煙への機会を提供していきたい。
高橋裕子先生が実施して、禁煙成功率が100%に近いインターネットを利用した禁煙マラソンが始まっていない時代に、岡山健康管理所では禁煙マラソンを実施していました。禁煙成功率は良いとは言えないかもしれませんが、保健室の提案から会社として「禁煙マラソン」を事業として実施できたことは素晴らしいことだと思っています。禁煙マラソンは毎年同じでは進歩がないので、禁煙希望者に応援としてアドバイザーをつけたり、トライアスロンと称して6か月間継続する方法も実施し、数年間継続実施ができました。結果は全国産業安全衛生大会での発表や他の学会で何度か発表する機会を得ました。
おまけですが、禁煙による「たばこ貯金」で、奥様が希望していたオホーツク海の流氷を見に行かれた社員もいました。
次回は機会があれば、他の業務について紹介できたらと思います。
《福岡相談員の研修会》
https://okayamas.johas.go.jp/tag/fukuoka_etsuko/
大事な道具 耳の聞こえを 騒音から守りましょう(結縁晃治相談員)
モスキート音というのを聞かれたことがあるでしょうか?
文字通り蚊の羽音なのですが、17000Hz前後の高周波音で、10-20歳台の若い人にはよく聞こえるが、加齢とともに聞こえなくなるといわれています。その特徴を生かして、夜間のコンビニの周囲など若者がたむろして困るところでは、その音を流して若者に不快感を与えて集まらないようにすることにも応用されているようです。
またモスキート音まで高い周波数でなくても4000-8000Hzの高い周波数の音の聞こえは加齢により、それ以下の低い周波数より早く低下してきます。加齢に加えて、大音量の音を聞くことが多いと、高い周波数の音が早く聞こえなくなってきます。
現在機械加工の現場では数値制御の工作機械が主流になっても、やはりミクロン単位での仕上げとなるとその刃物の切削音を聞きながら加工するしかないと熟練工の方からは聞いています。このような熟練工の仕事では音が重要なので、耳栓なんかつけていられないという声も聞くこともしばしばあります。しかし金属加工の時にでるような大きい騒音をずっと耳栓などの防具をつけずに聞いていると高い周波数の音の聴力が低下してきます。騒音対策をおろそかにしているとせっかく若いときによく聞こえる耳をつかって技能を磨かれても、経験を積んで腕が上がったころに、
作業の目安になるはずの高い周波数音の聞こえが低下しているので、それまでの努力が報われなくなってしまうという悲しい事になってしまいます。工場機械の整備調整でもメーターなどの数値も重要な目安だが、最後は回転音の微妙な違いを聞き取って、調整するのだとベテランの方からはお聞きしたことがあります。音へのこだわりが必要な職場の方ほど、若いときから騒音対策は十分に気を配っていただいて、大切な道具としての耳の聞こえを大事にしていただきたいと思っています。
《結縁相談員の研修会》
https://okayamas.johas.go.jp/tag/yuen_koji/
2.研修会のご案内
研修会についてはこちら
https://okayamas.johas.go.jp/training/
3.産業医研修会(2023年1月)
産業医研修会についてはこちら
https://okayamas.johas.go.jp/tag/ss,sj,sk/
4.新たな化学物質規制オンライン説明会
新たな化学物質規制に係る関係政省令の改正について、周知徹底を図るためのオンライン説明会(Zoom)を開催します。受講無料、全日程同じ内容、時間は14:00~16:10です。
【令和4年】
11月16日(水)、11月22日(火)、12月05日(月)、12月13日(火)
【令和5年】
1月12日(木)、1月16日(月)、2月7日(火)、2月17日(金)、3月3日(金)、3月9日(木)
既に満席の回もありますので、お申し込みはお早めに!
https://okayamas.johas.go.jp/chemicals/
5.労働衛生コラム『化学物質規制の見直しについて~化学物質の自律的な管理を基軸とする規制~』
令和3年7月、「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会報告書」が公表されました。
報告書では、事業者はリスクアセスメントを行い、ばく露防止のために講ずべき措置を自ら選択して実行することを原則とする仕組み(自律的な管理)に見直すことが適当であるとされました。
本コラムでは、報告書の検討結果の概要と検討結果による特化則等の改正について説明します。
https://okayamas.johas.go.jp/column-no10/
次回の第180号は2023年1月初旬に配信予定です。