1.相談員便り

メンタルヘルス療養者におけるリワーク通所を成功につなげるポイント~療養者の主体性をどのように刺激するか?~(濱本貴史相談員)

昨今、リワークプログラムを提供する医療機関が増えており、職場復帰に際してリワークプログラムを利用して復帰する従業員も増えている。リワークプログラムの有効性は科学的にも証明されつつあるが、職域が期待している結果につながらないことがある。

メンタルヘルス不調者が発生する経過としては、療養者本人の適応力(適応的知性)の低さがベースにあり、業務量・業務の質的、対人折衝等の負荷で業務上の支障が生じていることが多い。その過程において上司や同僚からの指摘、対人トラブルがあったことが契機となり、もしくは上司の評価や他人の顔色を気にすることで相談に至らず、療養に陥ることがある。

療養者には再療養を防ぎ、適応力の向上させるためにリワーク通所が必要だからと、関係者よりリワーク通所を勧めたとしても、療養者から通所の同意が得られないことがあるし、言われるがままリワーク通所を始めると実効的な対策につながらないこともある。それは療養者が自己の課題や自己変容の必要性を認識しないまま通所を開始するからで、既定のプログラムをこなすだけになり、実効性のある対策につながらないことになる。

当方の務める企業では、メンタルヘルス不調により療養を繰り返す方、その見込みが高い方にリワーク通所を推奨し、最近では10件弱の療養者でリワーク通所を活用し、再発防止数の低下、職場で高い満足度を得られている。リワーク通所につなげ、実効性のある対策とするため、私は3つの工夫をしており紹介する。

一つ目として主体性の刺激(自己の課題を認識、自己変容の必要性を理解)が特に重要だ。病前に生じていた業務上の支障を上司等からアサーティブにフィードバックし、改善を求めて上司や産業保健職がコーチングにより内省を促し、課題に気づきを得てもらっている。

二つ目として、リワーク通所に対する意味をどう認識して開始するかも重要だ。ただ単に上司や産業保健職に言われたから通所している人と、自分の人生を変えるとか、変化が激しい社会においてどのような状況であったとしても生き残れるようにと意味づけて通所する方では、最終的な実効的な対策に大きな差がでることになる。

三つ目として、人事や産業保健職からの伝える側の姿勢も重要です。単なる仕事として伝える場合と、相手が配偶者や兄弟だと考えて伝える場合はどうでしょうか。自分の家族だったらどうかと考え、療養者に寄り添い、一緒に明るい将来を目指すその思いを伝えれば、リワーク通所で得られる価値は変わってくるはずです。

職域では法令で雇用が守られているとはいえ、賃金相当の労働力を提供できない場合は、雇用の喪失につながることを見ることがある。必ずしも同職場にとどまりづけることが最良な選択とは限らないので、職を変えるというのも選択肢の一つだが、いずれにせよリワーク通所は療養者の人生を変え、人生をより豊かに、いきいきと働くことにつながると信じている。

《濱本相談員の研修会》
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外国人労働者の労働災害と特別教育(横溝浩相談員)

入管法(出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」))で定める「外国人」とは、「日本の国籍を有しない者をいう」(入管法第2条第2号)とされており、日本国籍を有している限り、他の国の国籍を有していても、入管法上は外国人ではありません。

最近、この外国人を雇用する事業場も年々増加し、休業4日以上の死傷災害は増加しています。岡山県でも昨年死亡災害(挟まれ・巻き込まれ)が発生しています。全国的にみても外国人労働者の災害が増加しているのが「挟まれ・巻き込まれ」、「切れ・こすれ」です。もちろん、「有害物との接触」も発生しています。

私が気になっているのが「特別教育」を必要とする業務に就くことです。

労働安全関係では高所作業です。6.75mを超える箇所での作業では、墜落制止用具(フルハーネス型)を使用しなければなりません。また、一般的な建設作業の場合は5mを超える箇所、柱上作業等の場合2m以上の個所でもフルハーネス型の使用を推奨されています。この場合、ロック機能付きランヤードの使用が推奨されています。

ここで問題は「特別教育」です。フルハーネス型を使用して作業を行うには4,5時間の「特別教育」が必要です。テキストは日本語版しかなく、外国人の方ではとても理解が困難と思います。

労働衛生関係では「粉じん作業特別教育」です。この教育も4,5時間の教育時間となっていて、テキストを理解するのが難しく思います。私は、事業場の依頼で「粉じん作業特別教育」を行うことがありますが、外国人労働者の参加があります。この方々は日本語の理解が速く、テキストの理解もできる方です。珍しい例として、日本人の奥様がいて、テキストの理解が難しい用語がある場合、あらかじめ奥様がご主人の母国語に翻訳してテキストに記入して研修に臨んでいる方がいらっしゃいました。感心させられました。また、その奥様はご主人の使用している防じんマスクを毎日、ご家庭で洗浄して職場に持たせるそうで、またびっくり感心させられました。

この「特別教育」のあり方についてもう少し述べたいと思いますが、このあたりにしたいと思います。外国人労働者に対しては教育のあり方についてテキスト等の改善ができない限り、「特別教育」を必要とする危険な作業には就けさせない方が良いと思います。このような問題は皆様の職場での問題はないでしょうか。

引用文献:外国人労働者安全衛生管理の手引き令和3年度厚生労働省委託事業

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次回の第185号は2023年6月初旬に配信予定です。