1.相談員便り

「メンタルヘルス」とは?(内田晃裕相談員)

今回は「メンタルヘルス」をテーマにお話をさせていただきます。

メンタルヘルスとは「こころの健康」という意味です。皆さんはこの言葉を聞いて何を思い浮かべるでしょうか。元気・楽しい・落ち込んでいる・怒っているなど様々な気持ちを想像されるのではないでしょうか。このような気持ちはこころの健康状態に関係しています。こころの健康は体の不調や変化と違って、目では見えにくいし、検査で数値も出ませんので、非常にわかりにくいものです。楽しい度何%とか不安度何%とわかるといいですが・・・気持ちなので、時間や状況によっても左右されることが多いです。主観的な感覚なので、周りからもわかりにくいといえます。とにかくわかりにくい。

そのため、まずは気持ちの変化に目を向けることが、こころの健康について考える一歩目になります。何をしている時にどんな気持ちになっているのか、何をしている時に楽しい、あるいは嫌な気持ちになりやすいのかなど、自分に注目していくと自分の気持ちに気付きやすくなってきます(ちなみに“マインドフルネス”といったいわゆる瞑想は、自分に意識を向ける方法として注目されています)。気持ちやこころは「感情」を想像してもらえると少しわかりやすくなるかもしれません。楽しい時に楽しいという感情を実感できているでしょうか、逆にへこんだ時は落ち込んだ感情に入り込みやすくなります。

メンタルヘルスでは、感情をコントロールして落ち着いている状態や楽しいといったこころの動きを感じられることが非常に重要になってきます。元気な時、そうではない時と感情には幅があり、一時的な変化は自然なものです。ただ、ネガティブな感情を持続的に感じていると体や精神への負担につながり、注意が必要です。メンタルの健康を保つことはネガティブな感情変化を持続させないことが大切です。感情はアラーム機能の役割を担っているといわれており、アラームがずっとなっていると不健康な状態です。アラームを消す作業、自然でニュートラルな状態、楽しさなど様々な感情を感じられる状態に戻すことがメンタルヘルスの工夫になります。

ここまでわかりにくいメンタルヘルスについて述べてきましたが、日頃考えないメンタルヘルスについてもう少し研修を通して、皆様と考えていければなと考えています。

《内田相談員の研修会》
https://okayamas.johas.go.jp/tag/uchida_akihiro/

産業保健師時代のお仕事③「健康通知表」&「健康管理の状況」(福岡悦子相談員)

今回も福岡が産業保健師時代に実施していた特徴ある事業について紹介致します。

1.「健康通知表」

NTT岡山健康管理所では管理者の方を対象に毎年1月頃通院人間ドックを実施していました。退職を控えたある管理者の方から次のような意見をいただいた。NTTに在職中はベルトコンベアに乗ったように時期が来れば健診などの案内が届いているが、退職すると地域の健診を受診するようになります。学生時代にもらっていた通知表のようなもの(健康に関する通知表)がいただけると大変助かると。そこで保健室全員で検討し、健康通知表を作成し、退職辞令と共に手渡すこととなりました。A3版を二つ折りにし、表紙には下図のように名前を入れました。表紙を開くと、左半分に健診結果を示しました。結果は最新データに基づいて三段階評価としました(赤は治療中、黄色は経過観察、青色は正常範囲)、右半分には健診時の問診に基づいて生活習慣を五段階評価とし、また今後の生活に向けての一言アドバイスを入れました。一言アドバイスを入れるためには個人をよく知っておく必要があります。裏側は“べっぴんより愛をこめて”として、将来ターミナル成人病駅に向かうのではなく、花も実もある人生に向かってほしいという思いを絵にして盛り込みました。

健康通知表
べっぴんより愛をこめて

健康通知表は平成6年度から退職者に退職辞令と共に手渡すことができました。

平成6年度:262名
平成8年度: 12名
平成10年度: 88名
平成12年度:190名

平成7年度: 56名
平成9年度: 85名
平成11年度: 58名

2.「健康管理の状況」

「健康管理の状況」は、福岡が就職した時代に既に先輩たちが作成していました。先輩たちが卒業された後は、当時の岡山健康管理所長のご配慮で「健康管理の状況」を冊子として200部印刷し、自分たちの仕事を知ってもらうように全国に配布するようにとの有難い指示をいただき、北は北海道から九州まで知り合いに送付していました。届いた方から感想やもう少しこのようにしたらというご意見をいただき、大変嬉しかったことを覚えています。

「健康管理の状況」は保健師、看護師の担当業務別にまとめていきました。内容は以下の通りです。

発刊にあたって
  目       次
  Ⅰ.概     要
     組織と業務
     社員の構成
  Ⅱ.健康づくり
     べっぴんだより
     健康教室  
     健康通知表
  Ⅲ.職場巡回・健康相談
  Ⅳ.健 康 診 断
     定期健康診断(法律)
      入院人間ドック
      雇用時健診
      深夜勤健康診断
     NTT独自の施策
      VDT健康診断
      婦人科検診
  Ⅴ.疾病管理
     指導区分の状況
     循環器管理
     胸部管理
     消化器管理
     大腸精密検査
     糖尿病
     メンタルへルス
      精神衛生相談室
      メンタルヘルス健康教室
     喫煙対策
     死亡者の状況
   Ⅵ.外来業務
   Ⅶ.学会発表等
      学会発表
      新見公立短期大学看護学科学生実習
   Ⅷ.資     料
       平成12年度健康管理活動の展開
       べっぴんだより
       学会発表
   Ⅸ.あ と が き

 「健康管理の状況」作成はNTTの合理化、組織編成の名のもと平成12年度をもって残念ながら終了しました。

今回相談員便りの当番にあたり、これまでの産業保健師業務の歴史として大切に保存していた「健康管理の状況」を見直し、懐かしく思い出しながら作成いたしました。

《福岡相談員の研修会》
https://okayamas.johas.go.jp/tag/fukuoka_etsuko/

2.研修会のご案内

研修会についてはこちら
https://okayamas.johas.go.jp/training/

3.産業医研修会

産業医研修会についてはこちら
https://okayamas.johas.go.jp/tag/ss,sj,sk/

4.勤務間インターバル制度に係るミニ研修会

当センター主催の研修会の終了後、一部の研修会において勤務間インターバル制度に係るミニ研修会を行います。この研修会の所要時間は15分程度で受講は任意です。産業保健関係者のほか、事業者、人事・労務担当者の方で、制度導入をご検討の際はご参考にしてください。

https://okayamas.johas.go.jp/iv-mini

5.共催セミナーのご案内

全国健康保険協会岡山支部では、令和6年度健活企業表彰式・講演会を開催します。

表彰された企業の取組事例発表や講演会では両備グループ代表兼CEO 小嶋光信氏が登壇し、「ハッピーライフで健康経営」をテーマに講演されます。

日時:令和6年8月23日(金)13:30~16:00
会場:岡山県医師会館 三木記念ホール
参加:無料
人数:先着250名

詳細・申込はこちら
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/okayama/cat080/2024062805/

6.『産業保健21』第117号が発行されました

特集:ウェルビーイングと産業保健

  • インタビュー産業医にきく:人間がもっとしなやかに働ける仕組みを作り、遠隔地でも保健指導100%を実現したい
  • 長時間労働対策のヒント:今では毎日がノー残業デー、従業員の自主的な取組で効率化を推進
  • 判例:飲食店店長の過労死に名目的代表取締役の責任が認められた事案(株式会社まつりほか事件)
  • 研究紹介:働き方(出社・在宅勤務)と勤務時間外における仕事の連絡の影響

など

ダウンロードはこちら(無料)
https://okayamas.johas.go.jp/21-117/

情報誌『産業保健21』は、産業医をはじめ、保健師・看護師、労務担当者等の労働者の健康確保に携わっている皆様方に、産業保健情報を提供することを目的として、独立行政法人 労働者健康安全機構が発行しています。

7.労災疾病等医学研究普及サイトのご案内
「脊柱靭帯骨化症」について、「アスベスト」について

「脊柱靭帯骨化症」について

脊柱靭帯骨化症は、脊柱管内の靭帯(後縦靭帯・黄色靭帯)が骨化することで脊柱可動域が低下したり、脊髄が圧迫されることにより四肢麻痺などの神経障害を起こす疾患で、特定難病に指定されています。

予防的治療法や治療薬剤はなく、脊髄圧迫症状を生じた症例には手術が行われますが、術後に後遺症を残すことが少なくありません。

手術対象者としては勤労世代である中高年が多く、治療成績は術後のADLや復職状況に大きく影響します。

労働者健康安全機構では、脊柱靭帯骨化症に対する手術治療成績の調査、合併症の少ない最適な手術方法の確立、動物モデルによる治療薬探索などを目的とした以下の3つの研究課題を設定し、令和5年度から開始しています。

[1]脊柱靭帯骨化症に対する手術の後ろ向き調査
[2]頚椎後縦靭帯骨化症に対する手術の前向き調査
[3]脊柱靭帯骨化症疾患感受性遺伝子に着目した基礎実験研究

50歳代前後の壮年期に発症することが多い脊柱靭帯骨化症に対する手術成績が向上し予防的治療が確立すれば、勤労者医療に大きく貢献するものと考えています。

https://www.research.johas.go.jp/sekichu2023/index.html

「アスベスト」について

アスベスト(石綿)関連疾患の労災認定件数は毎年1,000件前後となっていますが、その中には他の疾患との鑑別が困難なものや診断方法が特殊なものがあり、申請から認定までに時間がかかるものも少なくありません。

こうした診断方法が難しいアスベスト関連疾患について、明確かつ簡易な診断方法・指標を確立し、より適切な治療・予防に役立てることを目的として、当機構では長年アスベスト関連疾患の診断等についての研究を行っています。

労働者健康安全機構では過去に明確な労災認定基準がない良性石綿胸水について、新たな認定基準を確立することを目的とした研究を行ってきました。

令和5年度からは、労災保険給付の迅速・適正化を図ることを目的とし、以下の項目を設定し研究を行っています。

[1]良性石綿胸水症例のびまん性胸膜肥厚への移行に関する研究
[2]良性石綿胸水診断基準策定のための前向き臨床研究

https://www.research.johas.go.jp/asbesto2023/index.html


次回の第200号は2024年8月15日に配信予定です。