1.相談員便り

職域における高齢労働者の健康対策と男性更年期障害について(道明道弘相談員)

近年の少子高齢化により高齢労働者が現場で必要とされるため、令和3年4月1日より、改正高年齢者雇用安定法が施行されました。今回の改正では、70歳までの就業機会を確保するための措置が、努力義務として設けられました。

厚生労働省では「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」を作成し、実施可能な労働災害防止対策について、積極的に取り組むよう努めるものとしています。

具体的には、次のような取組があげられます。

  • 身体機能の低下等に伴う労働災害についてのリスクを洗い出し、必要な改善を行う
  • 身体機能の低下を補う設備・装置の導入(照度、段差、補助機器等)や、勤務形態を工夫する
  • 高年齢労働者の健康や体力の状況を把握する(健康診断等)
  • 高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた業務の提供、併せて身体機能の維持向上に取り組む
  • 安全衛生教育については、十分な時間をかけ、特に未経験の業種・業務についてはより丁寧な教育訓練を行う

また、労働者には、自らの健康づくりに積極的に取り組み、また事業主の行う取り組みに対しても協力することが求められていますので、定期的に労使双方の取り組みについて確認し合うことも効率的と考えます。

ガイドラインには、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのチェックリスト」も用意されていますので、これらの活用も有効と思います。

また、近年、更年期障害については女性だけでなく、男性にも無縁ではないことが知られていて、中高齢労働者の健康対策にも必要であることが言われています。男性更年期障害は概ね40歳以降が多いですが、中には30代の方もあり、逆に60歳~70歳になって初めて発症する場合もあり、その存在を知っておくことは中高齢労働者の健康対策には必須となっています。

男性更年期の診断にはAgingmalesʼsymptom(AMS)スコアと言うのがあり、中等度(37点)以上あるような場合は男性更年期障害の可能性がありますので、年齢に関わらず一度診断のために受診が勧められます。

対処法においても生活環境・習慣の改善が重要で、規則正しく十分な睡眠時間を確保することは、ホルモンの分泌を促します。また食事においてニンニク・玉ねぎ・牡蠣はテストステロンの産生を増やし、肉類・卵・乳製品などのたんぱく質の摂取も大切で、さらにストレスを過度にため込まないことも効果があると言われています。治療としては漢方療法やサプリ等のほか、積極的な治療法としてホルモン療法(アンドロゲン補充療法:ART)もありますが、副作用等もあり専門医を受診することが必要です。

《道明相談員の研修会》
https://okayamas.johas.go.jp/tag/domyo_michihiro/

2.研修会のご案内

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3.産業医研修会

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4.化学物質の自律的管理に向けた講習会(講師:城内 博)

労働安全衛生法の政省令改正により職場における化学物質規制は大転換。

これからは化学物質を取扱う事業者による自律的管理が原則となりますが、50 年以上続いた法令順守型が染みついた思考を変えることは容易ではないでしょう。

この説明会は政府検討会の座長を務められるなど、化学物質管理の第一人者である城内博先生に「自律的管理」の考え方や対応などをわかりやすくご説明いただきます。

岡山会場:8月31日(木)13:30~16:20
倉敷会場:9月1日(金)13:00~15:50

https://okayamas.johas.go.jp/chemi2023/

5.『産業保健21』第113号が発行されました

特集:第14次労働災害防止計画と産業保健

・健康診断の事後措置とその対応
・おさえておきたい基本判例(兼業による連続かつ長時間労働に
 ついて本業企業に安全配慮義務違反が認められた事案)
・機構で取り組む研究紹介(リハビリテーション用歩行支援機器
 の開発)

など

ダウンロードはこちら(無料)
https://okayamas.johas.go.jp/21-113/

情報誌『産業保健21』は、産業医をはじめ、保健師・看護師、労務担当者等の労働者の健康確保に携わっている皆様方に、産業保健情報を提供することを目的として、独立行政法人 労働者健康安全機構が発行しています。


次回の第188号は2023年9月初旬に配信予定です。