前回の労働衛生コラムNo.8「規模50人以上の事業場の労働安全衛生について」において、総括安全衛生管理者などの選任などにより安全衛生管理体制を構築しなければならないことを説明しましたが、このコラムでは、規模50人未満の事業場も、一定の安全衛生管理体制を構築しなければならないことなどについて説明します。

なお、事業場や事業場の規模の考え方については、労働衛生コラムNo.8「規模50人以上の事業場の労働安全衛生について」の「“常時50人以上使用する事業場”とは」をご覧ください。

(2022年7月)

安全衛生推進者等

常時50人以上の労働者を使用する事業場では、安全管理者、衛生管理者の選任が義務付けられていますが、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場では、業種によって、安全衛生推進者か衛生推進者(安全衛生推進者等)を選任しなければなりません。

(1) 安全衛生推進者等を選任すべき事業場

林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業安全衛生推進者
その他の業種衛生推進者

(2) 安全衛生推進者等の職務

次の業務を担当させなければなりません。なお、衛生推進者の職務は、そのうち衛生に係る業務に限ります。

  1. 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
  2. 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
  3. 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。
  4. 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
  5. 安全衛生に関する方針の表明に関すること。
  6. 危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)及びその結果に基づき講ずる措置に関すること。
  7. 安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること。

(3) 安全衛生推進者等の資格

  1. 都道府県労働局長の登録を受けた者が行う講習(安全衛生推進者養成講習)を修了した者
  2. 学校教育法による大学又は高等専門学校を卒業した者(独立行政法人大学改革支援・学位授与機構により学士の学位を授与された者若しくはこれと同等以上の学力を有すると認められる者又は同法による専門職大学の前期課程を修了した者を含む。)で、その後1年以上安全衛生の実務※に従事した経験を有するもの
  3. 学校教育法による高等学校又は中等教育学校を卒業した者(学校教育法施行規則第150条に規定する者又はこれと同等以上の学力を有すると認められる者を含む。)で、その後3年以上安全衛生の実務※に従事した経験を有するもの
  4. 5年以上安全衛生の実務※に従事した経験を有する者
  5. 安全管理者及び衛生管理者・労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタントの資格を有する者

安全衛生の実務については、衛生推進者にあっては、衛生の実務となります。

(4) 安全衛生推進者等の選任

ア 安全衛生推進者等を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任しなければなりません。
イ 事業場に専属の者を選任しなければなりません。(特例あり。)
ウ 安全衛生推進者等を選任したときは、安全衛生推進者等の氏名を作業場の見やすい箇所に掲示する等により関係労働者に周知させなければなりません。

健康管理等を行わせる医師等

常時50人未満の労働者を使用する事業場は、産業医の選任義務はありませんが、医師又は保健師(医師等)に労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるように努めなければなりません。

健康管理等を行わせる医師等は、医師にあっては、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師、保健師にあっては、労働者の健康管理等を行うのに必要な知識を有する保健師が望まれます。

また、前記医師等による労働者の健康管理等の適切な実施を図るため、前記医師等が労働者からの健康相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければなりません。

なお、後述の地域産業保健センターでは、医師等による労働者の健康管理に関する相談等を無料で行っています。

関係労働者の意見を聴くための機会

常時50人未満の労働者を使用する事業場では、安全衛生委員会等を設ける義務はありませんが、安全衛生委員会等に代えて、安全又は衛生に関する事項について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けるようにしなければなりません。

地域産業保健センター

労働安全衛生法では、「国は、常時50人未満の労働者を使用する事業場の労働者の健康の確保に資するため、労働者の健康管理等に関する相談、情報の提供その他の必要な援助を行うように努めるものとする。」とされており、これに基づく国の具体的な援助として、地域産業保健センター事業による労働者の健康管理等に関する相談、情報提供があるとされています。

現在、地域産業保健センターは、産業保健総合支援センターの地域窓口として、労働者数50人未満の小規模事業場に対し、以下の業務を行っています。

○ 健康診断の結果についての医師からの意見聴取
○ 労働者の健康管理に係る相談
○ ストレスチェックに係る高ストレス者や長時間労働者に対する面接指導
○ 個別訪問による産業保健指導の実施

なお、「健康診断の結果についての医師からの意見聴取」と「長時間労働者に対する面接指導」は、安衛法で実施が義務付けられていますので、ご留意ください。

岡山県下の地域産業保健センターについては、こちら