2023年2月1日(水)に配信された「岡山さんぽメールマガジン第181号」です。

1.相談員便り

人間が日常を取り戻せばウイルスも日常を取り戻す2023年か(勝田吉彰相談員)

2023年はコロナをめぐるあれやこれやから、「平常を取り戻す年」になりそうです。医療機関や福祉施設では依然としてクラスタ発生に悩まされることはある一方で、行動制限の発出も抑えられ、われわれの産業保健現場でも稼働を取り戻す年となるでしょうか。メディアを賑わしてきた2類5類問題も“一応の”決着を見そうです。

さて、このような「人間が平常を取り戻す」ことはすなわち「コロナ以外のウイルスにとって平常を取り戻す」ことも現実ですから、これからの産業保健現場ではこれに向き合ってゆく必要があります。ここは視点を変えて「ウイルスの立場」になってみてみましょう。ウイルスの勢力にとって重要なのは「火元」と「通り道」です。

この3年、コロナ対策として世界中で行われてきたこと・・・マスク・集会の抑制・ソーシャルディスタンス・換気etcは、ウイルスの「通り道」を狭め、ズタズタに通行不能に遮断することでした。しかし、世界的な対策緩和によって(米国CDCなどマスクの呼びかけを取り下げていないにもかかわらず)マスクをつける人は減少し、繁華街はにぎわっています。ウイルスの通り道も立派に(?)復旧してきているのです。

では、2023年以降、どのような(コロナ以外の)ウイルスが元気を取り戻し、産業保健現場で注意が必要になるのでしょうか。

1.麻疹(はしか)

2015年に日本はWHOから清浄国認定を受けた麻疹。これは日本国内に土着の麻疹はもはや存在しないということを意味し、したがって、日本国内で発生が報じられることはすべて輸入麻疹です。

そしてコロナ禍以前には、関空から、沖縄から、持ち込まれたケースが時折報じられてきました。麻疹の基本再生産数、ひとりの感染者から何人の(抗体もっていない)人に感染させるかという、感染力の指標となる数字は12~18とチャンピオン級です(ちなみにコロナは当初の武漢株で2.5程度、感染力がパワーアップしたオミクロン株でも5ぐらいではと言われていますから、麻疹に比べれば穏やかです)。

コロナと異なるのは、ワクチン2回接種していればOKですので、産業保健現場では、従業員のワクチン(風疹とあわせたMRワクチン)接種が実施されているか(実施漏れがないか)のチェックが重要になります。

2.蚊媒介疾患(デング熱・ジカ熱・チクングニヤ熱)

2014年に東京代々木公園を舞台とするアウトブレイクで大きく報道されたデング熱。その後も京都奈良へ修学旅行した首都圏の高校生の発症例など、コロナ以前には話題になっていました。

この疾患は、日本国内に棲息するヒトスジシマカでも媒介されますから、感染者が日本に入ってくれば、国内の蚊を介して感染が拡大することになります。ここで「火元」となる東南アジアでは、コロナ対策にマンパワーがとられたこともあり、2022年には感染者数が急増しています。そして「通り道」の国際往来が回復すれば、おそらくこちらもコロナ禍以前と同様に話題となってくることでしょう。

産業保健として留意点は、6月頃からは工場敷地内の水たまりや古タイヤ・コンテナなど蚊の幼生(ボウフラ)の発生する場所を塞ぐこと、そして海外出張者や赴任者に対して蚊に刺されない対策を伝授することになります。虫よけスプレー(長時間の効果が必要なら高濃度30%の製品を使うことなど)、長袖長ズボン、藪に近づかず、公園は草むらから離れて道の真ん中を歩くことなど。

3.その他

すでに2022年から報じられてきたように、インフルエンザ・RSウイルスなどコロナと共通の経路の呼吸器感染症、さらに、手洗いの頻度が減れば消化器感染症のリスクもあがります。

基本的な感染症対策、手洗いや「かみかみ(換気・密集・会話・みんなで防ごう)」はぜひ、繰り返しリマインドしてゆきましょう。

《勝田相談員の研修会》
https://okayamas.johas.go.jp/tag/katsuda_yoshiaki/

2.研修会のご案内

研修会についてはこちら
https://okayamas.johas.go.jp/training/

3.産業医研修会(2023年3月)

産業医研修会についてはこちら
https://okayamas.johas.go.jp/tag/ss,sj,sk/

4.岡山県受動喫煙防止・禁煙推進セミナー

県では、コロナとタバコの関係や新型タバコ、さらには、企業における受動喫煙対策・禁煙対策の進め方について、オンラインセミナーを開催します。

ご興味がある方は、ぜひご視聴ください。

岡山県健康推進課ホームページ
https://www.pref.okayama.jp/page/756470.html

【セミナー概要】
■日時 令和5年2月15日(水)14:00~16:00
■開催方法 Web開催(Zoomを使用)
■主催 岡山県
■定員 300名(先着順)

■プログラム
(1)あいさつ

(2)講演
[1]改正健康増進法及び岡山県受動喫煙防止条例の概要説明
  (県担当)

[2]新型タバコ・新型コロナ時代の禁煙推進方策
  (大阪国際がんセンター田淵貴大先生)

(3)トークセッション
「みんなどうしてる?企業における受動喫煙・禁煙対策」
 コーディネーター 大阪国際がんセンター田淵貴大先生
 パネリスト 受動喫煙・禁煙対策に取り組む企業2社
 (株)TANIGAWA、フェニテックセミコンダクター(株)(順不同)
 禁煙成功者1名

■対象者 事業者及び県民
■参加費 無料

■申込方法 下記ホームページからお申し込みください。
https://event-home.com/jyudoukitsuen/
■申込期間 令和5年2月15日まで


次回の第182号は2023年3月初旬に配信予定です。