2022年9月1日(木)に配信された「岡山さんぽメールマガジン第176号」です。

1.相談員便り

プレゼンティーズム 労働生産性に影響を与える体調不良(村嶋誠相談員)

台風の前や雨降りなどの天気になると体調を崩す人は案外多い。

めまい、頭痛、関節痛などの体調不良だ。このような症状・状態は天気痛(または気象病)と呼ばれている。私もその一人だが頭痛を発症する。片頭痛の発作だ。朝頭痛が発症したときに薬を適切に内服せず放置すると一日中痛みが続く。仕事に集中できない。

このように「出勤しているものの業務効率が落ちている状況」がプレゼンティーイズムであり、それに対して「欠勤や早退により業務ができなくなる状況」がアブセンティーイズムだ。どちらも労働生産性を低下させる。アブセンティーイズムが労働生産性低下の大きな要因と思われがちだが、健康に関連する生産性損失などを含むコスト評価を示す健康関連総コストの推計を見るとプレゼンティーイズムの占める割合が約77.9%にも及び4.4%のアブセンティーイズム、15.7%の医療費コストをも大きく上回っている(厚労省「コラボヘルスガイドライン」)。

ここ数年注目され多くの企業が取り組んでいるのが「健康経営」だが、健康保持・増進など健康管理にかかる費用を「経費」ではなく「投資」と考えて労働生産性向上をめざす経営手法だ。「健康経営」においてプレゼンティーイズムは、職場で対応すべき重要な課題のひとつであるが、原因となる体調不良には、どのような疾患が含まれるのか。すぐ思い浮かべることができるのが「メンタル不調」だ。しかし注目すべきは「頭痛」「肩こり」「ドライアイ」「不眠」などのごくありふれた症状である。「気合が足りない」「さぼっている」「たいしたことない」「自己管理ができていない」と考えられがちである。

令和3年度の経産省の健康経営度調査には、健康保持・増進に関する教育内容に関する設問の選択枝として、これらの症状も含まれている。

本人にしか辛さがよくわからない体調不良は軽視されがちだが、適切な対応をすることにより改善されることも多く、プレゼンティーイズム対策の対象疾患となる。健康情報を正しく活用する能力のことをヘルスリテラシーと呼ぶが、健康教育の一環としてヘルスリテラシーを高めることでプレゼンティーイズムを防ぐことができ、また労働生産性も高めることができる。少子高齢化が進む中で、労働者一人当たりの労働生産性を高めることができる対策はますます重要となるだろう。

ちなみに「片頭痛」は、女性の13.0%、男性の3.6%(坂井教授の全国統計、 頭痛大学ホームページ)が抱える比較的多い疾患のひとつである。環境を整え適切に対応すれば改善されることも期待されるが受診率が低く市販の鎮痛薬に頼っている人が多い。富士通クリニックの五十嵐久佳先生によるインターネット調査によると、「仕事に支障がでるほどの片頭痛が出たときにどうするか」の質問に対して92%が我慢して勤務を継続すると答えていた。多くの理由が「周囲に迷惑をかけたくないから」であった。

職場ではヘルスリテラシーを高める教育や働く環境を整えていただきたいが、頭痛をお持ちの社員の方には市販の鎮痛薬だけに頼らずに、正確な診断や適切な治療薬を処方してもらえる医療機関への受診をお勧めしたい。

《村嶋相談員の研修会》
https://okayamas.johas.go.jp/tag/murashima_makoto/

溶接ヒューム(特定化学物質)防じんマスクのフィットテストが来年から始まります。(横溝浩相談員)

1.作業場の分類
(1)継続して行う屋内作業場(作業時間は短時間で期間をあけて行う場合も含まれる)
(2)屋内作業場(作業場が固定されていない、その都度作業場所が異なる)
(3)屋外作業場(屋根を除く、周壁が2側面以上解放されている)

2.有効な呼吸用保護具の使用等(令和4年4月1日より)
上記作業場、(1)、(2)、(3)すべて該当する。溶接ヒュームの濃度により「要求防護係数」を求め、呼吸保護具の種類から選択します。

ただ、作業場(2)、(3)については溶接ヒュームの濃度の対象ではありませんので、「防じんマスクの選択、使用について:基発第0207006号平成17年2月7日」によりDS2、DL2、RS2以上の等級の防じんマスクを使用する必要があります。

☆令和5年4月1日より防じんマスクのフィットテストが始まります
呼吸用保護具のフィットテスト(令和5年4月1日より)

上記作業場の(1)該当いたします。(2)、(3)は除外です。

定量的フィットテスト(標準7つの動作)と(短縮4つの動作)の二つの方法があります。私見ですが、短縮定量的フィットテストの方が被験者にとって楽だと思います。

実施にあたっては、自社で行う方法と作業環境測定機関、健康診断機関にテストを依頼する方法、保護具の販売業者に依頼する方法が考えられます。

また、定性的フィットテスト(標準)は味を感じる方法でテストします。

【1】定量的フィットテスト標準(概略)
7つの動作(模擬面体または実際に使用している防じんマスクにサンプリングアダプターを取り付けたもの)

  • 通常の呼吸(1分以上)
  • 深呼吸(1分以上)
  • 首を左右に回す(1分以上)
  • 頭を上下に動かす(1分以上)
  • 発声(1分以上:100から逆に数える、詩を暗唱する、テキストを読むなど)
  • 前屈(1分以上)
  • 通常の呼吸(1分以上)

私見ですが、大変そうです。

【2】定量的フィットテスト短縮(概略)
定量的フィットテスト(標準)と計測機械が異なります

  • 前屈(50秒)
  • その場の駆け足(30秒)
  • 頭を左右に回す(30秒)
  • 頭を上下に動かす(30秒)

私見ですが、この方が被験者にとって楽のようです。

【3】定性的フィットテスト「サッカリン」の味を感じるテスト
(使用予定の面体または現在使用している面体と定性的フィットテストキット、「サッカリン」の噴霧器)

同じく7つの動作に加えて、事前に「味覚のいき値」(味を感じるか否か)のスクリーニング30回を3回に分けて行います。その後、7つの動作しながらフィットテスト用フード内に「サッカリン」を噴霧してテストを行います。これは、保護具メーカーの動画で確認することができます。

私見ですが、夏場はフード被ると暑いし面倒な感じがいたします。

いよいよ半年後になってきましたが、どの方法を採用するか、実施日程、人数や所要時間(業務に支障はないか)、テスト会場などの準備が必要と思われます。どのような問題点が出てくるのでしょうか。

以上、簡単にご説明させていただきました。ご不明な点がありましたらご相談ください。

《横溝相談員の研修会》
https://okayamas.johas.go.jp/tag/yokomizo_hiroshi/

2.研修会のご案内

【Zoom】
★マークがついたものは、後日見逃し配信(YouTube配信)を予定しています。当日に都合が悪い場合でも、Zoom研修会にお申し込みください。

●9/1(木)14:00~16:00『キャリアコンサルタント視点からみた「がん治療と就労の両立支援」』
→「がんなのですが、今後、仕事をどうしたらよいでしょうか?」と突然、労働者から相談を受けたら、あなたはどうしますか?相談場面等で役立つ心がけと対応方法、特に、(1)傾聴のコツ、(2)キャリアの知識を学びます。

●9/5(月)13:00~14:30『「聞き方」のコツ トレーニング2』
→悩み・ストレスによる体調変化などを来した従業員に対する話の聞き方をロールプレイを通して学習していきましょう。グループワークを行います。

●9/12(月)10:00~11:30『国境を越える産業保健』★
→コロナ禍のトンネルを抜け、海外とのビジネス往来も再開してきます。そのような中で、海外出張者や赴任者に伝えるべきことを最近の動向を踏まえて解説します。

●9/21(水)14:00~15:30『LGBTQ/SOGIの基礎知識と企業が考えること』★
→企業の人事や産業保健の担当者が知っておくべきLGBTQ/SOGIの基礎知識を解説するとともに、特に、トランスジェンダー当事者への対応を考えます。

●9/26(月)13:30~15:00『全国労働衛生週間、粉じん作業作業場、有機溶剤、特定化学物質取り扱い作業場の作業環境管理、作業管理について』★
→作業環境管理、作業管理において「局所排気装置」、「呼吸用保護具」、「労働衛生保護具」などについてわかりやすく説明させていただきます。

●10/5(水)14:00~15:30
『生物学的モニタリングの基礎知識とその応用』★
→労働安全衛生法の改正(2014年)の改正により,リスクアセスメントが義務づけられ(2016年施行)ました。化学物質の暴露管理が労働衛生管理の中で益々重要となり,あらためて,生物学的モニタリングが注目されています。生物学的モニタリングの概要および生物学的モニタリングから得られる情報について説明します。

●10/13(木)10:00~11:30
『労働安全衛生法の新たな化学物質規制について』★
→「職場における化学物質等の管理の在り方に関する検討会」で、化学物質管理は従来の個別規制から自律的な管理へ移行すべきとの報告書を受けて、厚生労働省では労働安全衛生規則等の大幅な改正を行いました。これらの規則改正について、元労働基準監督官が詳しく解説します。

●10/18(火)14:00~16:00
『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援…』★
→令和3年の事業所調査によると、過去1年間でメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者がいた事業場は8.8%、退職は4.1%でどちらも前年度より1ポイント増えました。大切な社員さんが円滑に職場復帰を果たし、復職後も再発しないためにも、まずは職場復帰支援の流れとポイントを基本的なステップに添って学びませんか?産業医のいない小規模事業場の対応も解説します。

【YouTube配信+Zoom(質疑応答とグループワーク)】
約1週間前から講義動画をYouTubeにて配信します。グループワークの参加を希望されない方は、質疑応答の後、Zoomから退出してください。

●9/28(水)15:30~17:00『メンタルヘルス(手順と様式)』、他

●10/27(木)15:30~17:00
『面接シナリオによるメンタルヘルス対策』、他

→タイトルのテーマについて、「基礎理論編」「基礎実践編」および「FAQ(よくある質問と回答)」の3モジュール(1モジュール15分目安)で構成されます。

【YouTube配信】
期間内であれば何度でも視聴できます。

●9/9(金)13:30~9/13(火)16:30
『初めてでもわかる職場における健康管理』(90分)
→職場の健康管理を推進する上で重要な役割を担う「定期健康診断」と「ストレスチェック制度」に関して初めての方にでもわかるように解説します。

●10/26(水)13:30~10/28(金)16:30『職域におけるメンタルヘルス対策とコーチングについて』(90分)
→昨年から始まった「風の時代」では、「知性・コミュニケーションなど」「形のないもの」が意味を持つようになり、「究極の心の時代(風の時代)」では、メンタルヘルス対策が最も重要ですが、特に「コミュニケーション技術」である「コーチング」は益々重要となると思います。

【会場に集まる研修会】
ピュアリティまきび(岡山市北区下石井2-6-41)で開催します。

●10/19(水)14:00~15:00
『職場における「心理的安全性」について』
→職場の「心理的安全性」を紹介します。発言しやすい職場環境を作り、仕事のクオリティを高めることで、組織全体のパフォーマンスの向上を目指します。

◆参加申し込みはこちら
https://okayamas.johas.go.jp/training/

3.産業医研修会(2022年10月)

日時:10月12日(水)15:00~16:30

会場:ピュアリティまきび

長時間労働・高ストレス者の面接指導について

講師:徳弘雅哉(三菱自動車工業(株)水島製作所専属産業医)

単位数:生涯専門1.5単位
受講料:無料

https://okayamas.johas.go.jp/2022-1012/

日時:10月20日(木)14:30~16:30

会場:ピュアリティまきび

演題1:嘱託産業医が知っておくべき作業環境管理
演題2:有害業務管理

講師:高尾総司(岡山大学大学院疫学・衛生学分野 准教授)

単位数:生涯専門2単位
受講料:無料

https://okayamas.johas.go.jp/2022-1020/

4.「運動器外傷機能再建」研究について

手や足、背骨(脊椎)や骨盤など、体を支えて動かす働きのある器官を運動器と言い、これらの運動器にケガ(骨折や捻挫)などの外傷が加わると、『立つ』『歩く』といった日常的な動作に大きな支障が出ます。この状態を「運動器外傷」と言います。

本研究では、運動器外傷を受けた患者について、年齢・性別・職業などの基本情報、骨折部位・骨折型・治療法などの外傷に関する情報、およびリハビリテーション・復職など受傷後の経過に関する情報などを「運動器外傷データベース」に収集し分析を行っています。

分析により運動器外傷患者の“QOL回復”や“復職”に対して“影響する要因”を明らかにすることで、早期復職や治療と仕事の両立支援につなげていくことを目的としています。

続きは、https://okayamas.johas.go.jp/undouki/

5.労働衛生コラム

●規模50人以上の事業場の労働安全衛生
労働安全衛生法は、1人以上の労働者を使用する事業場に適用されますが、常時50人以上使用する事業場のみに適用されるものもあります。

https://okayamas.johas.go.jp/column-no8/

●規模50人未満の事業場の労働安全衛生
規模50人未満の事業場も、一定の安全衛生管理体制を構築しなければならないことなどについて説明します。

https://okayamas.johas.go.jp/column-no8-2/

●メンタル不調者への初期対応
職場の部下や仲間に以前と比べてこんな変化がありませんか?

https://okayamas.johas.go.jp/column-no9/


次回の第177号は2022年10月初旬に配信予定です。